過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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◆JzBFpWM762
[saga]
2015/12/15(火) 23:53:53.41 ID:Y8k0m8hzo
二〇一〇年代から続く美徳で、日本人は落とし物をしっかり届け出をするので、日本で滞在する間に失せものをした海外の人間はその失せものが思いがけず戻ってきて驚く、といった話を聞いたことはあるけれど。
そもそも、盗られたという話だ。盗難では話が変わってくる。
「ま、なるようにしかならないよね」
言い淀んでいる間に咲の返答にあきらめをつけたのか、ネリーはそう結論づける。
「じゃ、とりあえずいってくるね!」
そして、行動は早い方がいいとばかりに踵を返して、駆けだそうとする。
「ま、待ってネリーちゃん!」
「へ?」
迷った末、声をかけた咲にネリーが振り向いた。
「サキ?」
「あ、あの……盗られた手紙って」
おずおずと声をかける。咲の中で、もやもやとした気持ちがふくらんでいる。だが、一度意識してしまったら、無視することはできない。
「手伝った、あの手紙?」
「ああ」
尋ねるとネリーはばつの悪そうな顔をした。
「うん、その手紙。ごめんね、せっかく手伝ってくれたのに」
「あ、ううん。そのことは気にしないで」
変なことを気にさせてしまった。言いたいのはそんなことではなかったのに。少しだけ後悔する。
「そうじゃなくて……その、警察にいくんだよね。よかったら私もいっていいかな……?」
「え?」
ネリーの意外そうな顔が目に入る。自分でもおかしなことを頼んでいるな、と思った。でも、言ってしまった以上、言い切ろう。咲は口を開く。
「手伝ったから、なのかな。盗られたって聞いたら気になって……」
対するネリーはどうしたものかと思案するような様子だ。そして「うーん」と軽く唸ると。
「ネリーは構わないけど……練習はどうするの?」
今からいくんだよね、とは聞かなかった。今からいくに決まっているから。
「え……っと、その間は抜けよう、かな」
そう言って、同卓する部員たちをうかがう。日本人部員二人にハオ。勝手なことを、と叱りを受けるのも覚悟してそうすると、日本人部員は「ああ、そう」という感じで、残るハオは、
「あ、抜けるの?」
と、どこか呆然とした表情で見つめ返してきた。しかしすぐに立ち返ったように表情を戻すと、厚意だろう提案をしてくれる。
「なら伝えとこうか?」
「いえ、さすがに自分で伝えます。……ネリーちゃん、ちょっとだけいい?」
丁重に断り、ネリーに視線を移す。
「うん、智葉のとこでしょ? 一緒にいく」
そのままネリーと連れたって智葉の元に。
咲がネリーに付き添いたい、そのために一時練習を抜けたい、という話。
その旨を智葉に伝えると、彼女は顔をしかめた。
「心配なんだろうが……それでお前まで練習を抜ける、そう言っているのか宮永?」
厳しい視線が飛ぶ。咲はそれを正面から受けて、逸らさなかった。
「……はい」
「……別にダメとは言わんが」
そう言いながら、決して快いとはいえない表情の智葉。その瞳からは、どこか失望した色が読みとれる。
「そういったことで麻雀への集中をおろそかにするなら、お前への見方も変えざるを得ない。……いや、個人的な見解だ。気にせずいってこい」
淡々と告げられる。さすがに、気にしないというのは難しい。智葉の私的な見解というのが、咲の理屈でいっても同じ答えを出したから。
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