過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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913: ◆JzBFpWM762[saga]
2015/12/23(水) 19:46:27.12 ID:Leypu+/yo
実は、家にいることは知っています。来る前にあらかじめ占いをしました。

お母さんがいないことも知っています。わたしがこの家に着いたとき、おねえちゃんはこの家にひとりでいると決まっているのです。

会える瞬間を心待ちにしながら待っていると、玄関についたインターフォンの向こうからくぐもった声が聞こえてきました。

「……咲、なの?」

インターフォンの向こうについているモニターか何かで察したのでしょう。カメラがついていそうなところに顔を近づけてみます。

「みえるかな? わたしだよ」

「本当に、咲?」

「わたしはずっとわたしだよ?」

考え込むような沈黙がありました。少し、不安になります。わたしは本当のことしか言っていないつもりです。

それから……考えるのが、億劫になったので結果だけ伝えます。おねえちゃんはわたしに会ってくれませんでした。お母さんを呼ぶから、そこで待っていてと言われました。

どうして、会ってもくれないの。

わたしはその場から逃げ出しました。こんなことならおねえちゃんがわたしと会ってくれるという未来が出るまで、占っておけばよかった。

逃げて、逃げて、逃げて、ろくすっぽ周囲も見ていられず街を駆け抜けていく。その間に景色はめまぐるしく変わります。

どのくらい走ったでしょう。息切れするほど走りましたが、元々体力に自信がありません。気分とは裏腹に大した距離は移動していなさそうだと思いながら、歩道の隅に立って息を整えます。苦しい。

涙がこぼれてきます。頬に涙が伝って、熱を持ったように顔が熱い。鼻がつんとする。

情けない泣き顔を周りにみせたくなくて、頭を低くして腕で隠そうとするけど、それでも道ゆく人から視線を感じて、嫌な気持ちになる……せめて泣き声はあげません。みっともないのはだめです。直さないと……。

でも、しゃくりあげるような声はどうしても漏れる。頭の中に焦りが募っていきます。同時に、悲しくてたまりませんでした。


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