過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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◆JzBFpWM762
[sage]
2016/01/03(日) 21:51:52.76 ID:JBG2pq10o
『私が貴女に命じることがあるとすれば一つ。報告の電話の習慣だけは欠かさないこと』
『うん。わかった』
そこに関しては二つ返事だった。迷う必要がない。
母との電話はそれで終わった。いま思い返してみても息が詰まるような会話で堅苦しいやりとりだ。
咲が理想とする母とのやりとりはこんなじゃない。もっと気楽で、心が安らぐようなあたたまるようなやりとりがしたい。
本の世界……純文学では理想的なほかの家族はどんな風だっただろうか。ともかく、自分自身がもっと精進しなければきっと望めないもので。
そうして壁を乗り越えてようやく望むやりとりができる。
一度でもいい、母を笑わせてあげたい……ずっと、子供のころからずっと思い続けて叶えようとしてきたことを、現実のものに出来る。
「……あっ」
ようやく脱線しすぎた集中に気づきまた間抜けな声を出す。
今私がすべきことはこっちだ。
芯が折れて以降すっかり止まっていた手を動かす。それから、まもなくして没頭した。
往来する車のエンジンや排気の音。犬の鳴き声。
屋外から聞こえてくる雑多な音は閑静な高級住宅街といえど完全には避け得ない。
しかし、ふとそれらがぴたりと止んで、静寂の訪れた部屋に一定の間隔で刻まれる秒針の音が響く。そんな時間がある。
カチ、コチ……カチ、コチ……。
紙面を走る筆記具の音よりも目立つ物音が鼓膜に規則的な振動をもたらす。
今は……八時ごろ。中断せずにずっと熱中していたから進捗は捗々しい。
その成果の対価にじんわりとした疲労が視神経に広がっていく。だが、それすらも心地よい。
部活、勉強、そして夜に行うことが多い牌譜の分析研究。これらに熱中しているとえもいわれぬ安心感に包まれる。
まるで、意識が研ぎ澄まされていくような……そういえばある有名な作家も文章を書くことで精神統一のような感覚を受ける、と漏らしていたことがある。
何ごとによらず書いたり、描いたり……肉体と頭脳を同時に駆使するような作業は精神に大きな効用をもたらすのかもしれない。
不意に浮かぶとりとめのない思考を手離して再度意識を傾ける。
熱中のあまり進みすぎたきらいがあるが、無理のない範囲であれば。それも構わないと母から事前に聞いてある。だから、このページが終わるまでは続けよう――。そんなことを考えていたときだった。
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