過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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967: ◆JzBFpWM762[saga]
2016/01/12(火) 23:40:23.14 ID:wCVwz0P2o
「………………死にたい」

羞恥心のフィラメントが焼き切れた咲は、もはや七二〇度回って冷静な状態で呟く。

未だかつてこんな類の羞恥を味わわされたことがあっただろうか……いや、ない。

こんな事にならないよう出かける前に一度用を足してきたはずなのに……どうして、今日に限ってこんな事になるんだろう。

「もう嫌だ……なんもかんも政治が悪い……」

脱力して天井を仰ぎながらこぼす。

――そのとき。

――――ガタンッ。

「……うん……?」

意識の片隅で、その音を聞く。何かをひっくり返したような物音。何か、蹴飛ばしてしまっただろうか。

そんな事を思いながら足下に視線を落とす。しかしそれらしきものは見当たらない。

きょろきょろと辺りを見回すと、

「…………」

男と、目が合った。

いや、いやいやいや。そんなはずはない。

ここは女子トイレ。男子禁制、というのはわざわざ何かで示す必要もなく当然の事で。

「あは、あはは……気のせい、だよね」

目の前、おそらく掃除用具などを入れる個室なのだろう、その扉の前。

アフロ頭の、ひょろっとした身体つきの、無精髭を生やすような中年の男が。

こんなところにいるはずがない。だってここは女子トイレだ。化粧室だ。男の人がいるはずない。

「うん……いるはずないよ。何かの幻か――」

「くうっ、しまった……! この私としたことが、売り子に最適な声を耳にして思わず転がり出てしまった……! 借金取りから逃げてる途中だったのに!」

「……」

言葉を紡ごうとして開いた口が閉じる。声まで聞こえた。……え、本物?

「え、え……きゃ――」

「大声出されると困る」

思い切り悲鳴を上げようとしたところで、何かで口を塞がれる。

男の人のごつごつとした大きな手だった。

「むぐっ!? もごもご……っ!」

「ちょーっと静かにしててね」

飛びかかるように踏み込んできたアフロ頭の男性に、そのまま背後に回り込まれて羽交い絞めにされる。

顔と言わず身体中から急速に血の気が引いていく。最悪の想像が頭をよぎった。

「むーっ、むーっ!」

「うわっ、暴れないで暴れないで」

暴れるに決まってる。どうしよう。どうしようどうしようどうしよう。

恐怖と混乱に意識が塗りつぶされつつあった。


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