過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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◆JzBFpWM762
[saga]
2016/01/14(木) 00:41:40.18 ID:fBiC32NWo
「ま、だから海へ強制労働? だっけ。その程度で済むならまだマシだって思っといたほうがいいぜオッサン」
「そうそう。もしかしたら割と人道的? な金貸しなのかもな」
……青年たちは、どう見ても二〇代そこそこの若者にしか見えない。そもそも年齢など聞いていないのだ。下手をしたら一〇代の可能性だってある。
一般的な感覚で言えば、社会の中では彼らは年輩者から『若造』や『青二才』と言われるような人たちのはずで。
それが、情けない姿ばかり見ているとはいえ、四〇そこそこはいってそうなアフロの中年男性にあろうことか講釈を垂れている。それも、社会の常識のようなものをだ。
その光景は、咲の目に異様なものとして映った。女子トイレに忍び込んだ変質者がどうとか、些末事として既に頭から吹き飛びつつある。
自分は……ネリーは、もしかして実態も知らず、とんでもない人たちと関係してしまっているのではないか……。
――恐い。得体のしれない怯えが冷たい怖気となり背筋を滑り落ちていく。
「……ミヤガワ? 大丈夫?」
「……え?」
声がかかる。ネリーの声。
「……大丈夫、じゃないよね。顔色、凄いよ」
心配げに、こちらを思いやってくれるような声。それは大げさかもしれないが、不可視の恐怖に暗くなりかけた視界に射した一条の光明のように感じられた。
「あ……」
「……何か、恐い事あった?」
まるで揺りかごに揺られているような気分に陥る声だった。いつの間にか俯いていた顔をあげると、気遣わしげなネリーの表情、その青い瞳と、目と目が合う。
「……大丈夫。心配ないよ」
声が震えてしまわないか心配だった。だが震えなかった。それはひとえに……お姉ちゃんのお陰だ。もし素の私だったら……見せかけの虚勢すら張ることもできなかったろう。やっぱり、お姉ちゃんはすごい。いつも頑張ってきてよかった、と心から思った。
同時に、
――悩んだこともあるけど……やっぱり、これをやめるなんて私にはできない。やめるべきじゃない。
強く、強くそう思った。
「……だいじょうぶ、そうだね?」
「うん。ちょっと……立ちくらみかな。心配かけてごめんね」
嘘をついた。真っ赤な嘘。けれど、これは必要のある嘘だ。詭弁かもしれないけど、そうすることが、自分のためにも、相手のためにも、良いことのように思うのだ。
「でさあ、そんときソイツらが――」
「ああ、そんなことあったあった――」
「ほおーう、なるほどね――」
狭窄を起こしていた視界が徐々に開けて周囲の様子を探ってみる。男性陣は飽きもせず、おそらくこちらの変調に気づくこともなく、話し込んでいる。話に夢中になっているのだろう。眼中にないようだ。
ふと、ネリーを見やる。すると。
「…………」
見たこともないような冷ややかな目で話し込む男三人を見つめていた。
その端整な双眸を持つ顔には何の感情も浮かんでいない。能面のような無表情。
「……ネ、……エルティ、ちゃん?」
淡白、というには無機質に過ぎるその表情。痛烈な既視感。それは……母が日常的に浮かべる表情と、あまりにも重なって見えた。まさか。ネリーに対して抱く印象がそれを錯覚として処理しようとする。
「……ね、ミヤガワ」
呼ばれる。優しげで穏やかな声。なんだか、違和感があるくらいに。
「……私、割と好きだよ。ミヤガワの事」
言葉を返せなかった。口を開きかけて、でも言葉にできない出所のわからない衝撃に圧倒され、立ち竦むようにその場に立ち尽くした。
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