44:名無しNIPPER[saga]
2015/03/23(月) 00:06:18.46 ID:Doc3hEfAO
―――しかし、シンジは思い出す。かつて彼と一緒にネルフの浴場に入った時のことを。
カヲルは確かにずば抜けた美形であり、また性格も穏やか、知的で包容力があり全てにおいて自分より優っているといえよう。
シンジ自身、そんな完璧な彼に強い憧れを感じていることも事実である。
しかし、しかしだ。シンジとてひとりの男、健全な男子中学生であったのだ。
カヲルに対する尊敬と憧れの中に僅かに男としての劣等感を抱いていたことも否めない。
そしてそんな彼にただひとつ自分が勝てるものがあるとすれば――その体格。
身長こそシンジより高いものの、少女と見紛うほどに細身で華奢なその体躯を見て、シンジは微かに希望を見出した。
しかし……
並んで湯船に浸かり、彼の股間に備わるアダムを初めて横目で視界に入れた時、シンジは己の考えの浅はかさを知った。
短い……そして愚かな夢だった。
格が違う。
決して覆ることのない予め決められた地位――ッ!
シンジ(ありえない……なんだこの……)
シンジ(凶々しい凶器は―――!!!!)
強者ッ…! 圧倒的強者ッッ…!!
シンジの視界がぐにゃあと歪む。
勝てない……同じ土俵に上がることすら許されない聖なる領域。物理的な壁。
例えるならばそれは一輪の薔薇。美しい花弁とは裏腹に鋭い棘を持つ薔薇のように。
そんな肉付きの薄い痩せた身体のどこにそんな最終兵器を隠し持っていたのか。
シンジはその時、使徒との戦いの中ですら感じたことのない最大の恐怖……
そしてかつてないほどにはっきりとした敗北をカヲルに対して感じたのであった―――
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