過去ログ - 京子「ねえ結衣ー。遺伝子を残せないのってちょっと悲しくない?」
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105: ◆IE4zSaOpSA[saga]
2015/03/26(木) 23:06:17.34 ID:1vJUpQqc0

私達はずっと生きていく。私達は大人にはなれない。後ろ向きな言い方をすれば、私達は決して未来へは進めない。時間を止めたまま、ずっとこのままで生きていく。

だから京子先輩は恋人を作らない。ずっと続く時間の中で、それは私達の関係を大きく変える出来事になってしまうから。寂しがる人がいるから。悲しむ人がいるから。それを過去の出来事として片付けることも許されず、その気持ちと環境のままで、ずっと生きていかなきゃいけない人が必ずいるから。

だから京子先輩は自分の中の「好き」を全部同じものにしようとしている。恋愛も、家族愛も、友愛も、全部おんなじものとして捉えようとしている。好きの形の一致も食い違いも全部はぐらかして、不幸が生まれないようにしている。それが京子先輩なりの優しさ。

それはもしかしたら、結衣先輩を迎え入れる時のためでもあるのかもしれない。私達が無意識に結衣先輩のいない穴を補い合っていたように、京子先輩はそうやって無意識のうちに、結衣先輩を迎える準備をしていたのかもしれない。

いや、もしかしたらなんかじゃない。せっかく芽生えた恋心を押し殺す理由としては、それこそがまず第一なんだと私は思う。京子先輩の気持ちも、杉浦先輩の気持ちも、結衣先輩の気持ちも、外から見ていた私にさえなんとなく分かっていたから。

両想いだってことも分かってるくせに。それでも京子先輩は結衣先輩のことが大好きだから。


恋なんてしなければ、京子先輩のそんな在り方も簡単なことだったと思う。それなのに私達には恋心が芽生えてしまう。子孫を残せない生き物のはずなのに。どっちにしろ、女の子同士なのに。

京子先輩の在り方は簡単なはずがない。例え誰にも寂しい思いをさせないためだったとしても、芽生えてしまった気持ちを無視し続けるなんてできっこない。先輩はいつも平気そうな顔をして、心の内には泣きたくなるほどのもどかしい思いを隠している。

そんな気持ちを一人で抱えて、ほんとに平気だと言うんならそれでよかったんだけど。京子先輩に限ってそれはない。こうやって私に気付かせるためのヒントを漏らしちゃうあたり、やっぱり先輩は一人で寂しかったんだと思う。誰かに気付いて欲しい気持ちがあったんだと思う。先輩は分かりにくい性格だけど、実は不器用で繊細な女の子だってことぐらいは私にも分かる。

それに今は、結衣先輩のいないはっきりとした寂しさまで加わっているんだ。私でさえ、120年分の寂しさが一気に押し寄せたような気持ちに涙を堪えることはできなかったんだから。平気でいられるはずがない。

今にして思えば、先輩には「しゃきっとしろ」なんて叱咤をするのは間違ってたかな。そんな形で元気を出してもらおうなんて、そんな単純な考えで慰められるほど先輩の心は強くない。ましてや「またかっこいい先輩に戻って欲しい」だなんて。今はむしろ、しゃきっとしないでほしい。女々しくて何が悪いと言うんだろう。

これならまだ、新聞記事を見つけたあの日の方が正しく振る舞えていた。変な意識が芽生える前は、それが無意識にできていたというのに。

とりあえず、意を決して踏み込んだ話を切り出した甲斐はあったかな。元々はまったく別の目的だったんだけど。それでも私に何ができるのかなんて分からないんだけれど。

ちなつ「…」ピコピコ

ちなつ「モテる女はつらいですね」

京子「なにが?」ピコピコ

ちなつ「…べつにー」ピコピコ


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