過去ログ - 戦艦水鬼「光溢れる水面に、わたしも」
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6:名無しNIPPER[saga]
2015/03/24(火) 13:49:57.93 ID:qsbs6+9v0

 それが憐憫であるとすればまだ戦艦水鬼にも理解はできた。だが、番傘の抱いている感情は、恐らくそうではない。想像でしかないにせよ確信できた。なぜなら、彼女は負の感情とともに生きてきたから。
 恨みだとか、妬みだとか、嫉みだとか。
 そう言うよくない感情はよく知っているつもりだから。

 試製51センチ三連装砲が轟音をあげた。衝撃波で戦艦水鬼と、そして番傘自身を吹き飛ばしながら、放たれた圧倒的な質量は幸いにも誰を捉えることもない。
 これこそ好機と彼女は撃った。同時に、飛び込んできた修験道服が、番傘を突き飛ばして一命を取り留める。小癪なと憤る暇さえ与えない周囲からの援護射撃。

 援護。援護である。
 あぁ、うらやましいことこの上ない。

 互いの主砲を全て向け合いながら同航戦へ。艤装の拳が水面を叩く。バランスを崩した番傘へ追撃。だが、艤装の加重をものともしない番傘の動作は、さすがといわざるを得なかった。追撃も、更なる追撃の拳も、全て空を切る。
 砲撃の炎が真昼の空をして白く染めた。戦艦棲姫が二人、両者の放った砲弾の一つが番傘の左半身に叩き込まれる――はずだったのだが。

 ツインテールの航巡が割って入っている。艤装と、肉体。両方を欠損させられ海上に赤い花が咲いた。
 それでも彼女は笑っていた。強がりではない、本当の笑い。

 あぁ、うらやましい。

 わたしもあんなふうに笑える日がいつかくるというのだろうか。



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