3: ◆2YxvakPABs[sage saga]
2015/03/26(木) 00:47:11.58 ID:avES/eip0
そんなドキドキも束の間。
ボワンッ! と、突然プロデューサーの体が煙に包まれる。
驚く菜々がどうしていいか対応に困っていると、プロデューサーを包んだ煙が晴れ、視界が鮮明になる。
煙が晴れた先には、先程までそこにいたプロデューサーの姿はなく、代わりに小動物らしき生き物がいた。
菜々が言葉を失うほどの衝撃を受けている中、その生き物は口を開いた。
「実は私……異世界から来た妖精でして」
「えええぇぇぇぇェェェエエエエぇぇええええぇぇえぇぇえぇえぇえエえぇえエエええぇぇぇえェェェええぇぇええええーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!!!!」
叫んだ。
人間、驚きでここまで叫べるものかと菜々自身感心するほどに驚愕の声をあげた。
菜々の人生、ここまで声を荒げたのは初めての事だ。
これでもかと言うくらい開いた瞳は、その目の前の生物に釘付けである。
元プロデューサーの見た目は、ハムスター……いや、どちらかと言えばネズミのように見えた。顔のパーツはどうみてもプロデューサーだが。
「私の住んでいたのはトゥケウィッチという世界でして」
「ちょちょちょっ! 進めるんですか! この、ナナを完全に置いてけぼりにした状況で話進めちゃうんですか!?」
かつてプロデューサーだったものは、菜々の驚愕などそっちのけて説明を始める。
見た目は変わっても、声の低さや雰囲気はまさしくプロデューサーだ。
菜々は今だに状況が飲み込めない。
「私の世界は、マースコミディアという組織に滅ぼされました。そのマースコミディアがこの世界にも手を伸ばしてきているのです」
「……」
キョロキョロとまわりにカメラがないかを探す菜々。そろそろドッキリと書かれた看板を持ったスタッフが駆け込んできても良いはずだと身構える。
「正体を知られたからには、菜々さんにはプリキュアになっていただくしかありません」
「メチャクチャ強引な手に出ましたね!!!」
カメラがあるかもしれないという心配がありながらも、我慢出来ずにツッコんでしまった。
彼がそんな事を言うと極道のソレに聞こえてしまう。
生きて帰すわけにはいかない的な。
「せめて、変身アイテムだけでも……」
名刺を差し出すように変身アイテムを渡してくるプロデューサー、もとい元プロデューサーのネズミ。
菜々はもう考えるのを止めてそれを手に取った。
それは器のようなものだったが、それには目もくれず、菜々は呆然としたような遠い目をしながら元プロデューサーの生き物を眺める。
間近で見てわかったが、あれはどう考えても作り物とか、そういう類のものではない。あまりにリアル過ぎる。
ネズミにしては猫くらい大きいし、顔は見るからにプロデューサーだ。
これがドッキリなら大したものだと、菜々は受け入れられない現実を前に微笑を浮かべるしかなかった。目はまったく笑っていない。
「それで、その……マースコミディアってのはなんなんですか?」
とりあえず、出来る限り情報を得ようと、プロデューサーに菜々は尋ねる。
もう、半分諦めていた。
「はい……言ってしまえば、人々の中に眠る『アイドル力』を狙ってくる組織です」
「アイドル力?」
「……かつて、私の世界にもあなた方のような存在がいました。名前は、アイドールでした」
「すんげぇパチモンくさい名前ですね」
「アイドールとは、皆から愛され、また人々を愛す存在。1人に注がれる愛は多く、また1人が捧げる愛も多くなります。しかし、時と共に捧げられる愛も少なくなりました。それでも、アイドールは変わらぬ量の愛を捧げました。最後には、愛を捧げるためだけに生きる人形のようになってしまったのです……故にアイドール」
「………………」
「そして、マースコミディアは、アイドールを哀れなマリオネットと呼び、そんな役から解放すると唄って、彼女達のアイドル力を奪い始めました。やがて、全ての人々が持つアイドル力が次々に奪われ、アイドル力を刈り取られるだけ刈り取られた私の世界は滅ぼされました。復興の目処は……ありません。そんなマースコミディアが……」
「重いわっっっ!!!!!!!!」
思わず元プロデューサーの話を中断させてしまう。普段の口調を乱すくらいには菜々も動揺した。
長い上に重い。
迂闊に聞いたら、とんでもない地雷を踏んでしまったようだ。
「プロデューサー……重い、重いですよ……なんていうか、すでにナナの心折れそうです」
「はぁ……その、すいません」
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