過去ログ - 櫻子「めぐみの雨と、恋で咲く花」
↓ 1- 覧 板 20
3:名無しNIPPER[sage]
2015/03/30(月) 17:27:03.30 ID:JxUSEnW0o
私たちはそれぞれ、無事に志望の進路先に合格した。もちろんそれも自分のことのように喜んだが、「みんな絶対受かる」と思っていた私にとって、そこに驚きという感情はなかった。ただただ、嬉しかった。みんなの夢がかなったことと、これでまた私たちが一緒になれると思って。
春休みは毎日のように遊んだ。受かったら皆で行こうと決めていた温泉旅行にも行ったし、毎日毎日が楽しくて、あっという間に過ぎて行った。バイトを極限に減らしてまで、みんなと一緒にいたかった。そのくらい待ち焦がれていた時間だったのだ。
卒業式は思い切り泣いた。皆に比べて受験という受験に携わっていなかったくせに、私が一番泣いていた気がする。
嬉しさ、悲しさが合わさった感情がとどまることなく溢れた。よみがえる思い出も全て涙になって溢れ、私は最高の高校生活だったと改めて噛みしめていた。久しぶりにそろったクラス全員の顔、荘厳に飾られた体育館、早咲きの桜の香りは、今でも昨日のことのように思い出せる。
そこを区切りに、私たちは新たな始まりに向かって歩き出した。入学先の下見に行く人が現れ、入学式の時に着るスーツをみんなで見に行ったりもした。
地元に残る私は、寛容な気持ちでみんなを見ていた。すっかり送り出す側の気持ちになっていた。ちょっとだけ、子どもを送り出すお母さんってこんな感じなのかなと思った。
お花見をしようという計画があったのだが、その計画の前日に私は撫子に呼び出され、二人きりで一足早い花見をした。
久しぶりのデートだと思っていたが、そうではなかった。でも撫子としては、れっきとしたデートとして私を誘い出したのだろうから、そういう意味ではそうであった。
私たちの、最後のデートだったのだ。
94Res/85.35 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。