過去ログ - 櫻子「めぐみの雨と、恋で咲く花」
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4:名無しNIPPER[sage]
2015/03/30(月) 17:27:41.67 ID:JxUSEnW0o
「電車で……何時間くらいかな。結構かかるよ」
「もう部屋は決まったの?」
「うん、そんなに大した部屋じゃないけどね。一人暮らしって初めてだから、ちょっと不安かな」
「そんな! 撫子は普段から家のこともちゃんとやってるじゃん!」
「家事とかはそうだけど……やかましい妹たちと、ずっと一緒だったからさ。静かなんだろうなあ、一人って」
新しい世界へ踏み出したことを語る撫子は笑顔だった。相当なプレッシャーに打ち勝って、ほっとしている人の顔だ。
そんな撫子の顔を近くで見ていると、今までとは違う名前のわからない気持ちがじわじわと溜まっていった。この顔がずっと見たかったのに、どこか納得のいかない気持ち。プラスでもマイナスでもない、けれど気になってしまう何か。
桜を見ながら、私がバイト先から持ってきたお菓子を食べた。明日のために場所を見学しようと、二人で桜並木を散歩した。賑わう花見客を横目に見ながら、よさそうな場所を探した。
人気が少なくなったあたりの桜に目をつけ、撫子はそれをしばらく眺めていた。
涼しくも眩しい太陽、風に舞い散る桜、ふわふわなびく撫子の髪。
目に映るすべてが、スローモーションに見えた。
別れの時が来たと、無意識に察知した。
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