13: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/03/31(火) 04:34:18.74 ID:w4MVYybr0
京太郎が母の元にたどり着くと母がこういった。
「晩御飯ができたわよ。食べましょう」
母の髪の毛は綺麗な金髪だった。しかし日本人だ。京太郎よりもずっと背が低い、どこにでもいそうなおばさんだ。京太郎が持っているふんわりとした雰囲気は母親から受け継いだものだろう。
小さなころに京太郎がどうして自分たちは金髪なのかといって聞いたことがある。髪の毛の色があまりにも普通でなかったのが、気になったのだ。小さなころだから、余計に気になった。
そのときに金髪をもって生まれる人が多い家系なのだといって母は京太郎に教えてくれていた。遺伝子の不思議だと笑うのだ。
まったく嘘などない。本当に母の血統は金髪が生まれてくる。京太郎の母方の祖父は少し髪の毛が薄くなっているけれども金髪である。母方の祖父に話を聞いてみると長い御伽噺を聞かされることになって困ったのも、京太郎は覚えていた。
晩御飯の途中で、京太郎は母にこういった。
「土曜日、龍門渕にいってくる。なんか、パーティーがあるとかで招待された」
少し間を空けて母がこういった。
「ご飯がいらなかったら連絡してね。あ、携帯壊れてたわね。代わりの携帯電話をもらってくればよかったわ」
母は少し考え事をしているようだった。京太郎には何を考えているのかわからなかった。
母が困っているのを見て京太郎はこういった。
「大丈夫だよ。電話なら借りればいいし携帯電話がなくてもたいして困らないから」
携帯電話を持っていて当たり前な時代である。連絡を取るのも携帯電話がなければ難しい。
「人とのつながりもこれがなければ、どうにもならないぞ」
といわれるような状況だろう。しかしまったく気にしていなかった。携帯電話がなくともそれほど困ることがないのだと、実感してしまったからだ。問題があるとしても友達からの誘いをすっぽかしてしまうくらいのものである。
晩御飯を食べ終わった京太郎は、食器を片付けてさっさと自分の部屋に戻っていった。もう一度、マンガを読み返そうと考えているのだ。
部屋に戻った京太郎は飽きるまで漫画を読み続けた。そして満足した京太郎は独り言を言った。
「最終巻は限定版が出るのか……発売日は、今週の土曜日。タイミングがよければ一気に読みきれたのか……パーティー終わりにでも買って帰ろうか。
すこしは暇つぶしになるだろう」
漫画をすべて読み終わった後、風呂に入りさっさと眠る準備を済ませて、ベッドの中に入り込んで京太郎は眠った。
やることがさっぱりなくなったので、京太郎はおとなしく眠ることに決めたのだ。学校の課題というのも、学校で終わらせてしまっている。どうにも集中力が増しているのか、それほど苦労することもなくなっているのである。
そうして携帯電話もないし、読みたい漫画の最終巻も土曜日にならないと手に入らないので、眠るしかなかったのだ。
深い眠りについた京太郎は奇妙な夢を見た。その夢は白黒だった。夢に浮かび上がっている光景はどこかの海辺だった。ずいぶんきれいな砂浜と、見たことがないくらいきれいな地平線が広がっていた。
また、砂浜には自分の仲魔、アンヘルとソックの姿がある。奇妙なのは、夢の中で京太郎が声を出そうともがくのだが、上手く声が出せないのだ。
しかし夢ではよくあることだ。
また、その夢の光景は姿を変えて違ったものに変わった。浮かび上がる光景はまたもや白黒だった。この光景は太陽のような熱の塊を前にしているものだった。この光景にはアンヘルとソックはいなかった。しかし、この巨大な熱の塊を見ていると、京太郎は不思議と戦わなくてはならないという気持ちになるのだった。理由はさっぱりわからない。
この光景もまた姿を変えて、別のものに代わった。三度目に浮かび上がった光景もまた白黒だった。この光景には三人の男の姿が合った。男だとわかったのは、背格好があまりにもがっしりとしていて女性的でなかったからだ。また三人とも身長が高かった。男が三人立っているだけなのだが、非常に印象的だった。
三人が三人とも狐の面をつけていたのである。そして、三人とも奇妙な服装をしていた。一人は平安時代の貴族のような格好、もう一人は武者のような格好、そしてもう一人はロングコートを着たスーツの男だった。どこかで見たような気がした。答えを京太郎は出せそうになかった。
ここで夢は終わった。
土曜日の朝日が差し込んできたとき、京太郎は目を覚ました。目覚めた京太郎の顔色は非常に悪かった。体の調子というのはまったく問題なかった。しかし、どうにも精神的にめいってしまっていた。京太郎の見た夢が原因である。
というのも、夢の内容を京太郎はさっぱり忘れてしまって、ただ、夢を見たという実感だけが残っていたのだ。はっきりとしない、この微妙な感覚が、気分を悪くさせるのだった。
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