21: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/03/31(火) 05:13:14.67 ID:w4MVYybr0
息を切らせているメイドさんにハギヨシが声をかけた。
「どうしました、井上さん」
散らかった部屋を片付けながらハギヨシがきいた。
ハギヨシの問いかけにメイド、井上純が答えた。
「クロマグロが届かないって。道が急に変わって、今の戦力じゃ、抜けられないってさ。一応センターまでは来ているみたいだけどそれ以上が無理くさいらしい」
息を整えてから、一気に伝えた。
この知らせを聞いて一番変化が大きかったのは龍門渕透華だった。ゲーム機のコントローラーを落としてしまっていた。
そしてぶつぶつとつぶやき始めた。
「まさか、嘘でしょう? こんなことがあっていいわけがない。クロマグロの活け造り計画が失敗? そんな馬鹿な。
ド派手なパーティー計画が、おじゃん? 普通のパーティーを開くの? この私が? この龍門渕透華が?」
青ざめている龍門渕透華を尻目に井上純にハギヨシは指示を出した。
「それなら、仕方がありませんね。普通にやりましょう。なくとも問題ありません。
無理にやる必要はないでしょう。クロマグロは後で普通の食材として使えばいいだけです」
ハギヨシの判断を聞いてメイドの井上純はうなずいた。別にクロマグロの活け作り何ぞせずとも、まともなパーティーが開けると知っているのだ。
メイドの井上が出て行こうとしたところで龍門渕透華がこういった。
「ちょ、ちょっと待って! ハギヨシ、あなたがディーさんといっしょにいけば間に合うのではなくて? ディーさんならセンターまで一時間とかからないはず。パーティーにも間に合う!」
少し顔色がよくなっていた。自分の考えが、窮地を切り抜ける作戦となると信じているのだ。
透華の提案を受けたハギヨシがこう返した。
「だめです。確かに間に合いますが、ほかの準備ができなくなりますよ。全体を完成させるのが先です」
もともとクロマグロの活け作りに否定的だったハギヨシは非常に冷えた対応をしていた。そもそも活け作りをつくるのはハギヨシなのだ。面倒が多いのは勘弁してもらいたかった。
透華がこう返した。
「なら、ディーさんだけでも」
ハギヨシがこう返した。
「ディーだけだと道を使えません。ヤタガラスの幹部関係者がルールを破るのはだめです。それに私もディーもヤタガラスに嫌われていますから余計に難しいでしょう。
痛くもない腹をつつかれるのは勘弁してもらいたいです」
龍門渕透華は黙り込んでしまった。ハギヨシがどうやっても譲らないのがわかったからだ。そして、自分が無理を言っているのもわかっていたので、それ以上騒ごうとしなかった。
話が終わったところで京太郎がこういった。
「俺が行きましょうか?」
かなり軽い口調だった。困っているし、手伝いができるのならそれでいいじゃないかと考えたのだ。それに暇もつぶせるかもしれない。
京太郎が提案すると龍門渕透華の顔色がものすごくよくなった。しかしすぐにしおれた。透華はこういった。
「だめです。パーティーの主役にそんなまねをさせるのは駄目です」
龍門渕透華が小さくなってしまったところで男性の声が聞こえてきた。ずいぶん陽気な声だった。
「どうやら、困ってるみたいだな。どうしたの?」
京太郎を龍門渕につれてきた運転手だった。はっきりと顔を見るのはこれがはじめてだった。見たところ三十台手前、身長は京太郎とハギヨシとそれほど変わらなかった。ただ、ハギヨシのように線の細い感じではなく、荒々しい感じがあった。
ハギヨシが簡単に事情を説明すると、運転手はこういった。
「なぁ須賀くん、確か漫画の最新刊がほしいって話じゃなかったか?」
京太郎がうなずいた。
「はい、ちょうど今日が発売日なので」
運転手がこういった。
「なら、センターで買えばいいさ。センターにはいろいろなものがある。マニアックな漫画の新作ももちろんおいてあるだろう。須賀くんが買い物をしている間に業者から品物を俺が受け取る。
須賀くんはほしいものを手に入れて、俺たちもクロマグロをゲットできる。それで丸く収まるんじゃないか?どうよ、ハギちゃん」
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