過去ログ - 京太郎「限りなく黒に近い灰色」
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247: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 01:10:34.79 ID:py78Qnqv0

 主人を差し置いてメイドが説明をするのはどうなのか。しかししょうがないことだ。龍門渕透華はこれからの龍門渕の顔役になる。そうなってくるとやはり立場に縛られるようになる。となると、立場に見合った発言が求められるようになる。

そんな彼女である。軽々しく事情を話すわけにはいかなかった。しかも京太郎はまだ正式な構成員ではない。正式な関係者ではないのだ。そんな相手に内部の力関係を匂わすのはまずかった。建前があるのだ。

 そういう建前を守るため国広一が気を利かせて説明をした。もしも国広一が説明をしていなければ、天江衣が、天江衣がしていなければソックが説明していただろう。

 国広一の説明が終わったところで、アンヘルが京太郎に聞いた。

「どうします? 私たちはどちらでもかまいませんよ。

龍門渕でも別の支部でも、ヤタガラスでなくとも。マスターが善しと思うほうへ私はついていきましょう」

 アンヘルはどうでもよさそうだった。興味なさそうにしていた。ヤタガラスに入ればメリットが大きいとはアンヘルも思っている。しかし、ぜひヤタガラスに入りたいとは思っていなかった。

 アンヘルがこういうと、ソックが続いた。

「まぁ、俺も同じような感じかな。善しと思うところにいけばいい」

 アンヘルよりもソックのほうがずっとどうでもよさそうだった。話をさっさと切り上げて、天江衣にブルーレイプレイヤーを使わせてくれと話しかけたそうにしていた。ソックの注意はビニール袋の中の品物に注がれている。

 京太郎の仲魔二人の軽い口調を聞いた国広一の表情が悪くなった。アンヘルとソックは京太郎にヤタガラス所属を薦めるというのが国広一の予想だったからだ。数十分前に客室で行ったやり取りの感じからして、断られるような空気はかけらもなかった。

京太郎がいやだといっても追い風になってくれるだろうと思っていた。それがここに来て、完全に放り出されていた。龍門渕透華の武力をそろえたい彼女にとってこれは困ったことだった。

 顔色が悪くなった国広一をみて天江衣が目を細めていた。天江衣は国広一が何を考えているのか見抜いたのだ。

 そして天江衣は心の中でつぶやいた。

「透華の戦力にしたいと思っているのだな、かわいらしい忠義者。ただ、今回は失敗だったな。こんな面倒なことをせずとも頼めばいいのだ。

思考を誘導する手間が無駄だ。

 相手は魔人だぞ? いきなり現れてヴァイオリンを弾いて立ち去る奴とか、説教をいきなり初めて立ち去る奴とかの同類だ。

 下手に頭を働かせると失敗する。もう遅いがな。

 というか、ソックは何で鼻息を荒くしているのだ? ちょっと怖いぞ」

 
 さてどうすると、静かになったところで京太郎は答えた。

「なら、俺をヤタガラスのメンバーにしてください。今後ともよろしくお願いします龍門渕さん」

 これといった力をこめることなく淡々としていた。京太郎はすでに自分が何を求めているのかを知っている。京太郎が求めているのは全身全霊で行われる戦いだ。オロチとの戦いで、それがよくわかった。死にかけたけれども楽しい時間だったと心底思っている。

しかし、この願いが普通に生きていたらかなわない願いだともわかっていた。

 あまりにも野蛮だ。大きな声で話せることではない。しかし、それでも体験してしまったら、自覚してしまったらもう戻れない。だから、京太郎はこのチャンスを逃さなかった。

ヤタガラスに入れば、楽しめるかもしれない。きっと普通に生きているよりはずっとチャンスがあるだろう。ならば、入るべきだ。京太郎はそう考えて、飛びついたのだ。もう、退屈することはないだろう。


 京太郎の答えを聞いて国広一がガッツポーズをとった。しかし小さなガッツポーズだ。あっという間にもとの姿勢に戻っている。ガッツポーズをとったことに気がついているのは天江衣だけである。

 国広一は心配していたのだ。京太郎がサマナーの世界から離れたいと思っているのではないかと。

 なぜなら、松常久というヤタガラスの黒い部分を見てしまっている。見ただけならまだどうにかなるかもしれない。しかし、巻き込まれて襲われている。二度と戦いたくないと思う人のほうがはるかに多いだろう。

 そして話を聞けば、オロチに気に入られてしまったということもある。不気味だといって震え上がってもおかしくない。そんな京太郎の状況だったのだ。アンヘルとソックの後押しが期待できなくなった時には、京太郎という人材が確保できなくなったと絶望したのだった。

しかし、京太郎はヤタガラスに入るといった。しかも龍門渕に入るのだ。国広一の望み通りだった。龍門渕透華の貧弱な兵力が増強されたのだ。喜ぶべきことだった。




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