過去ログ - 京太郎「限りなく黒に近い灰色」
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26: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/03/31(火) 05:34:59.43 ID:w4MVYybr0

 戦い終わった京太郎にアンヘルとソックが近寄ってきた。アンヘルはクワのようなものを持っていた。なぜかジャージの袖をまくっていた。

 ソックはがっしりとしたウエストポーチを持ってニコニコ笑っている。ソックもアンヘルと同じようにジャージの袖をまくりあげていた。ジャージのズボンポケットからは軍手が飛び出していた。

 呼吸を整えている京太郎に、アンンヘルがこういった。

「無事に試験終了というところですね。あのときよりもずっとよくなっていましたよ。やっぱりなじんできたからなんですかね?」

 アンヘルは片手でクワを遊びながら、笑っていた。非常に満足いくパフォーマンスを京太郎が見せてくれたからだ。

 自分と契約を結んだ京太郎がよくなっていくのが、うれしいのだ。

 アンヘルが微笑んでいると京太郎にウエストポーチをソックが差し出した。ウエストポーチはなかなかの大きさだった。

 そしてがっしりとして簡単には壊れないつくりである。

 ソックがウエストポーチを京太郎に渡したのはアンヘルとソックの二人がお使いについていけないからである。用事があるのだ。

 しかし丸腰で主を行かせるわけにはいかない。ウエストポーチにはお使いで使えるかもしれない道具がいろいろと入っているのだ。

 京太郎がウエストポーチを受けとるとソックが説明した。

「ウエストポーチに、特製の栄養ドリンク(改良・祝福済み)三本と、いざというときにつかえる煙球を三つ入れておいた。

煙幕は地面に叩きつけたら使えるようになっているから、火はいらないぞ。

ドリンクは飲まなくても効果があるが、できれば飲んでくれ。粘膜からが一番吸収率がいい。

 あと、タオルも入っているからな」

 ソックがウエストポーチの中身について説明をしているとアンヘルがこういった。

「福引で当たったタオルを入れたんですか? かさばりませんか?」

 クワをいじっているアンヘルにソックが答えた。

「いいんだよ。男子なんだからハンカチよりはタオルだろ」

 アンヘルとソックの話を聞いていた京太郎が二人に聞いた。

「お前ら来ないの?」

 寂しいわけではないけれども、二人がいてくれたほうが心強かったのだ。二人ともではなくていいから、一人でもいてくれたらいいのになという気持ちだった。

 京太郎の質問にアンヘルが答えた。

「これから龍門渕の余っている土地に家庭菜園を作るんですよ。敷地内ですけど、あまってるみたいなんで借りちゃいました」

 アンヘルは中庭の奥のほうの土地を指差していた。指差している方向には使っていない土地というのがひろがっていた。かなり広く、家庭菜園というよりも普通の畑が作れる広さである。

 京太郎は驚いてこういった。

「よく許してもらえたな。しかしなぜに、家庭菜園?」

 そもそも龍門渕の土地である。家庭菜園をしたいといっても使わせてくれるわけがない。たとえあまっていてもよしとはいわないだろう。

 驚いている京太郎にアンヘルが答えた。

「お願いしたら透華さんが許可をくれましたよ。いいませんでしたっけ、植物を育てるの得意なんですよ」

 嘘はついていない。アンヘルが「派手な植物も作れますよ」とか「美容にいい植物も作れますよ」といってお願いをすると簡単にうなずいてくれた。

 アンヘルにソックが続いて答えた。

「そうそう、お話したら快く許可をくれた。まぁ、あれだよ。食費を少しでも抑えようとおもってな」

 龍門渕透華の父親と祖父にも話をしたのだけれども、それも問題なかったのだ。とくに、育毛剤の材料になる植物をアンヘルが作り、ソックが調合すればいくらか儲けが出ますよという話をすると、透華の父親と祖父は、簡単にうなずいてくれた。

 懐が寒いのも頭が寒いのも困るものなのだ。しかし、本当の目的は食費を抑えることである。魔人として受肉したばかりのアンヘルとソックは物理的におなかが減ってしょうがないのだ。



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