過去ログ - 京太郎「限りなく黒に近い灰色」
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56: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/07(火) 05:17:16.96 ID:Joyq1BtQ0
休憩を終えた車はするすると道を進んでいった。今までのような道を飛び越えたりはねたりするような動きはほとんどなくなった。

それというのも、ハギヨシから送られてきた情報のおかげである。完全な異界の地図を手に入れられたわけではないのだが、それでもどこに進めばいいのかわからない状況よりはずっとましだった。

 この不完全な地図のおかげで、異界物流センターまでの道のりはかなり普通のドライブになっていた。

 そして、十分ほど穏やかなドライブが続いた。そうするとディーがこういった。

「そろそろ到着だ。道の先にある巨大な山みたいな建物が異界物流センター。通称デパート。

 日本の魔法科学技術の粋を集めて作られた九十九神さ」

 ディーはずいぶんほっとしている。パーティーの余興として必要な黒マグロを無事に手に入れることができたと思っている。

目的地は目と鼻の先なのだから。そして少なくとも手に入れてしまえば、後は戻るだけでいいのだ。お嬢様の愚痴を聞かなくて済むとほっとしていた。

 ディーの説明を聞いた京太郎は目を見開いていた。京太郎の目には富士山のような大きな盛り上がった何かが、ある。

 この富士山のような何かというのが、ディーの話によると異界物流センターということになる。しかし京太郎はずいぶん驚いていた。ディーの話が京太郎は信じられなかったのだ。

 そして九十九神という存在であるというのならば、まったく想像することもできない規模の悪魔である。

あまりにもうそ臭かった。スケールが大きすぎて意味がわからなくなっているのだ。


 富士山のような異界物流センターを見つめながら京太郎はディーにこういった。

「あの山みたいなのが九十九神? 九十九神って道具の妖怪ですよね? いくらなんでも大きすぎませんか?」

ディーの話が冗談だと思ったのである。

 ディーはこう返した。

「別に不思議なことじゃないよ。人間が百年間使えば九十九神が生まれるって話なんだから、九十九神なんて、どこにでもいるのさ。

 人類が始まってすでに数千年。親子二代で道具を使えばあっという間に九十九神がうまれてくる。それに武器だとか工芸品だけに命が宿るわけじゃない。

愛着を力にして生まれてくるのなら、建物にも命は宿る。

 日本にはそういう建物が山ほどある。作るのなんて簡単さ」

 ディーは実に真面目に説明をした。はじめてこの物流センターに来たときに京太郎と同じような反応をディーがしたことがあるのだ。

そのため、京太郎が信じきれないという気持ちもよくわかっていた。だから、昔自分が説明されたような方法で、説明をしたのである。

 ディーの説明を聞いた京太郎はうなずいた。

「はぁ、そういうものですか。規模が大きすぎてわからなくなります」

 一応は納得していた。しかしいきなり規模が大きくなりすぎたためにさっぱり想像力がついてきていなかった。

 それにしても、大きすぎた。何せ建物が集まって富士山のように構えているのだから、いったいどれほど集まっているのかわからない。

あまりにもでかすぎるので実感しなければ納得できないだろう。

 受け入れ切れていない京太郎にディーがこういった。

「これくらいで驚いていたらだめだよ。大きさだけなら異界物流センターはそれほど大きいわけじゃない。

 ちなみに須賀ちゃんは確認されている悪魔の中で一番大きな悪魔ってどのくらい大きいか見当がつく? 大体でいいよ」

 ディーは少し楽しげだった。京太郎の困っている姿というのが、なかなか面白かったのだ。これは、困っている京太郎を面白いと思っているのではない。

そういう意地の悪い考え方ではなく、もっと面白いものをこの少年に見せたら、どういう反応をしてくれるのだろうかという面白さである。

自分の故郷とか、自分が面白いと思っているものを人に勧めるときの気持ちというのが一番近いだろう。


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