57: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/07(火) 05:21:09.62 ID:Joyq1BtQ0
ディーに質問を飛ばされた京太郎は間を空けて答えた。
「わからないですね。少なくともあの山よりは大きいんでしょうけど」
ものすごく困っていた。富士山サイズの悪魔がいるということだけでも相当とんでもないことである。しかしそれでもまだまだ足りないというのだから、どのくらいなのかがわからない。
体長一キロくらいだろうか、十キロくらいだろうか。そんな風に考えるのだけれどもまったく物差しがない京太郎にはわからないことだった。
京太郎が答えるのを聞いて、ディーが答えを教えた。
「最低でも日本と同じ大きさかな。存在は確認できているけど、まともに測ったことはないみたいだから、はっきりとはいえないけど。
それでも最低で、日本と同じ大きさがある」
正直に答えた。まったく嘘はない。日本最大の悪魔の大きさは最低でも日本と同じ大きさがある。
ヤタガラスがどうにかして全体を把握しようとしたことがあったのだが、あまりにも大きいために距離を測るのをやめてしまったほどなのだという話を、ハギヨシから聞いていた。
ディーの答えを聞いた京太郎は素直に質問をした。
「なんて悪魔なんです?」
物流センターの大きさ自体がすでにうそ臭いレベルだったのだ。富士山サイズを更に超えたレベルの存在がいるといわれても思いつくわけもない。
なので難しいことを考えるのはやめてしまおうという境地に至っていた。
今の京太郎の頭にあるのは、そのとんでもない存在がどういう名前を持った悪魔なのかという興味だけである。
京太郎の質問にディーがこたえた。
「通称オロチ。正式名称は『葦原の中つ国の塞の神(あしはらのなかつくにのさえのかみ)』
名前は仰々しいが、道の九十九神さ。俺たちが今走っているのはオロチの背中。時々体をくねらせるから道が変わって困るんだよね。
最低でも日本と同じ大きさだといったのはこいつが時々脱皮するからさ。
オロチの抜け殻は抜け殻だけれども、大きすぎてひとつの世界として成立している。そのままの意味で、世界が出来上がっているのさ。
そして、何十回何百回と脱皮している。
結果オロチの異界は膨大な空間を所有することになった。脱皮するたびに世界が増えるわけだから。
で、ヤタガラスは大きさを把握できないわけだ。
ちなみにこの巨大な蛇は現世の道を歩く命が発散するマグネタイトを分けてもらい生きている。ちりも積もれば山となる理論だな。
マグネタイトの管理はヤタガラスの精鋭が責任を持ってきっちりと行っている。
といっても管理の必要はほとんどないんだ。おとなしくて、びびりな性格らしい。
それに、オロチはいつも眠っている。ハギちゃんが言うには退屈で、不貞寝しているらしい」
ディーは半笑いだった。まったく説明をしている内容に嘘はないのだけれども、話しているディーでさえ、いくらなんでもむちゃくちゃな存在過ぎるというので笑えてしまう。昔ハギヨシにこの話を聞かされたときはハギヨシの頭の調子が悪くなったのではないかと、疑ったほどである。
京太郎はディーの話を聞いて呆然としていた。そしてこういった。
「道の九十九神ですか。だから、道路がアスファルトじゃなくてかなり昔の石畳なんですね」
かなり驚いていた京太郎だったのだがいくらか冷静になっていた。そういうものだと思い受け入れることに決めたのだ。
そもそも魔法だとか悪魔だとかが存在しているのだ。そういうものがいてもいいだろうと、割り切るのはそれほど難しいことではなかった。
京太郎が理解したところでディーがこういった。
「まぁ、そういうこと。後数十年もすれば、アスファルトの部分が多くなるだろうね」
二人が話している間に富士山のように巨大な異界物流センターにスポーツカーは入っていった。
遠くから見ると大きな山にしか見えない物流センターだが近くによって見てみると建物が組み合わさってできているのがわかる。
雑に組み合わさっているのではなく、きっちりと隙間なく建物が組み合わさっている。城の石垣を見るような気持ちよさがあった。
異界物流センターの中に続く一本道を進んでいくと、古臭い建物に囲まれて進むようになる。急に薄暗くなるけれども、ちょうちんの列が道を照らしてくれる。この一本道がどんどん上に上に螺旋を描いている。
そうして、一番上まで進むと駐車場があり、いろいろな車が止まっているのだった。センターの内装は新しい建物と同じだった。床がぴかぴかで、電灯もよく見るタイプのものである。
むしろ止まっている車たちに問題がありそうだった。トラックのようなもの、ワゴン車のようなものはいいが、馬車、人力車のようなものがある。
これもまだいいとして四本足の悪魔がつながれていたり鳥のような悪魔が駐車場で待ちぼうけを食らっているのは、どうにもおかしかった。
しかしおかしくとも品物を取りにいくためにはここにスポーツカーを止めて移動しなければならなかった。
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