2:名無しNIPPER[sage]
2015/03/31(火) 17:00:03.62 ID:5f1jLFQY0
「……丹陽」
不意に私の名が後ろから呼ばれた。
そう、私の名は丹陽(たんよう)。
この国で必要とされ活躍した駆逐艦である。
「……」
私は声のした方を振り返る。
だがすでに台風で機関が大破しているため、体を動かすことも辛い。
まあ、それは取り過ぎた歳のせいでもあるかもしれないのだけれど。
「準備、できたよ」
その男性は優しく私に声をかけてくれる。
私の容姿は既に30代の中年、それに暴風のおかげで見れた顔ではない。
ただ、それでもこの国のために奮闘した私を称えるかのように、彼の眼は真っ直ぐ私を見つめていた。
「……隣、いいかい?」
その男性は、私がもう声を出せない程壊れていることを知っており、返事ができないことも知っている。
彼は少し遠慮がちに、海と空を見つめていた返事をしない私の隣に座った。
司令とはまた違うものの、彼もこの海の平和を望む指揮官だ。
懐かしい雰囲気に呑まれたのか、私の心は少しずつ温まっていく。
「……空を、見つめていたの?」
ええ。
正確に言えば、この晴れた空と暁に輝く水平線を眺めていたの。
遥か昔の話だけれど、この海には私と心を通わせた仲間がいっぱいいて。
この空には、誇り高き勇敢な戦士達が空を舞っていた。
そんな勇敢な皆に、少しでも近づけたら……少しでも会えるのならと、願いを込めて。
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