過去ログ - モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part12
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628: ◆EBFgUqOyPQ[saga sage]
2016/01/16(土) 19:08:04.15 ID:Ah1rtJBzo


 目を覚ませばすでに日は高く昇っている。
 窓から差し込む光が、視界を差し意識を覚醒へと導く。

 少女は、ゆっくりと周囲を見渡し何も変わらぬ自らの部屋を認識する。

「アー……あれは……ゆめ?」

 彼女自身そんな呟きを口に出すが、それは彼女自身が理解していることであった。
 それでも、認めることは耐えがたかった。

 まるで自分の中身を無くしてしまったかのような虚脱感。
 今自分がここに居ると認識できるのに、自分の存在はここにはないという矛盾。

 少女はゆっくりと立ち上がり、洗面台へと向かう。
 顔を上げないように俯きながら、蛇口をひねる。

 冷水を顔に押し当て、意識は鮮明にしても地に足がつかない。
 未だ夢の中のような、幻想に揺蕩う霧のような感覚。

「ああ……やっぱり」

 もはやわかっていたことだった。
 自分は、捨てられた。要らないと切り捨てられたと。
 言葉通り、見限られた。

 要らないものを脱皮(ぬ)ぎすてて、私はどこかに行ってしまった。

 洗面台の姿見には、何も映らない。
 そこに少女は存在しておらず、自らが不要なものを切り捨てた後の残滓でしかないと言うことを告げていた。

「私は……幸せなんかじゃなかった」


***




   


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