過去ログ - モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part12
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772: ◆OJ5hxfM1Hu2U[sage saga]
2016/02/10(水) 16:28:52.95 ID:jNcq/NRi0

 ドア一枚を隔てた室内に充ちる一触即発の気配が指先からニューロンへ光ファイバーめいた速さで伝わり、アイにそのドアを開けることを躊躇わせた。
 ヴィランの侵入を許したか? その可能性はアイの中ですぐに排除された。ドアの向こうにいるであろう二人ならば、こんな雰囲気になる前に鎮圧しているはずだ。
 アイは決断的にドアノブを回す。鍵はかかっていなかった。無慈悲なる凄腕の傭兵は薄い金属ドアを開き、後悔した。
 甘く香ばしい匂いが鼻腔に入り込む。睨みあう若い男と女。その狭間には、匂いの源たるアップルパイ……しかもチョコがかかっている!
 アイは即座に状況を把握し、溜息をついた。面倒な仕事を終え、面倒な荷物が増え、面倒を片付けるべく訪ねた先で最大級の面倒に出くわそうとは。

「……ゴホッ、オホン」

 わざとらしい咳払い。世話を焼くなどキャラではないが、知らぬ仲でもないヒーローコンビの危機を見て見ぬフリで去るのも気分が悪い。
 二人のヒーローはアイを前に休戦を決めたと見えた。大皿に載ったアップルパイ(チョコがかかっている!)に女がラップをかけた。
 男はその一部始終を目で追い、ようやく納得してかアイに向き直った。

「アンタが来るってのは、どういう風の吹き回しだ? 何かヘマでもやらかしたか? アイドルヒーローの手も借りたいレベルの」

「あいにく仕事は絶好調だよ。ただ、厄介な報酬を手に入れてしまってね。……ああ、少し世間話をしたい気分なんだ。茶を淹れてくれるかい?」

 あの緊張感は二人にとっても望ましくない状態であったらしい。女はホッとした様子ですぐさま給湯室に向かい、男は応接机を濡れ布巾で拭いた。
 アイはソファに身体を沈めた。ややあって女が三人分の紅茶を持って現れた。アイと向き合うように座るヒーロー二人、その間にはおよそ1.5人分の空間。
 実際他人事であったが、アイは気まずさを感じた。それを決して表面に出さぬよう意識しながら紅茶をすすり、苦労性の傭兵は世間話を始めた。

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