過去ログ - モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part12
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823: ◆lhyaSqoHV6[sagasage]
2016/02/25(木) 08:25:30.65 ID:rhio0V+5o


──現在から13年前・どこかの山奥──


かつて人間界を蹂躙し、しかし最終的に仁美の祖先に打ち破れ封印された、吸血鬼の祖の一柱──
人呼んで『夜明けを遠ざける者』は、永劫とも感じられる雌伏の時を経て、遂に復活の時を迎えていた。

「矮小なる人間共め……よくも……」

「真祖たる私を……このアオイを…………」

しかしその姿には、かつて魔界において魔王と並び立つとまで評された程の覇気は見受けられない。
長きに渡る封印が解かれた直後のため、衰弱し切っているのだ。

おまけに、間が悪い事に吸血鬼の弱点の一つである雨まで降っている。

「吸血鬼の支配下に置き、飼い慣らしてやるつもりでいたが……」

「事ここに至っては、連中を生かしておくことは出来ぬ……根絶やしにしてくれる……!」

「だが……先ずは、力を蓄えねばならぬか……く、忌々しき雨よ!」

祖は雨に打たれながらも、エネルギー源となる人間(の生き血)を求め、ほうぼうの体で歩き出した。



祖の復活と時を同じくして、足元が満足に舗装もなされていない山道を、足早に過ぎる男が一人。

男「(風の吹くまま、西へ東へ……急ぐ旅ではないが、雨の中野宿は御免被るな)」

男は行く当てのない旅を続ける身であったが、先刻から降り始めた雨に加え、日没が近いこともあって、人里を目指すその歩みは速い。

男「(あれは……女の子? こんな山の中に?)」

と、その進路上に、雨の中地面に倒れ伏す少女の姿を認めた。

男「(行き倒れか……?)」

すわ非常事態かと、急いで駆け寄る。

男「(なんだこの服は……妙な恰好をしているな)」

男「君、大丈夫か?」

人気の無い山林で、尚且つ見慣れぬ服装をしている点を訝しむが、恐る恐る声を掛ける。

「人間ども……よくも……ぐ……うぅ」

男「(息はあるようだが、何を言っている?)」

この少女こそ、今しがた復活を遂げたばかりの──かつて人間族を恐怖に陥れた吸血鬼であるのだが、男はそのような事は知る由もない。


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