過去ログ - モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part12
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826: ◆lhyaSqoHV6[sagasage]
2016/02/25(木) 08:29:40.27 ID:rhio0V+5o

葵「……自分がかつて人間にしたことを無かったことにできるとは思わないし」

葵「今更こんな事言うのも、都合が良すぎるって言われるかもしれないけど……」

葵「できたら、あたしのこと……見逃してくれたら嬉しいっちゃ」

仁美「……一応聞いておくけど、なんで見逃して欲しいの?」

仁美は、目の前の少女のいやにしおらしい態度を訝しがりつつ、問いただす。


葵「もっと大勢の人に、あたしの料理を食べてもらいたいけん」

葵「あたしの料理で、誰かを幸せにすることが出来たらいいなって」

葵「おとんがそうしてくれたようにね」


仁美「そっか……」

仁美は、どこか納得した様子で深い息を吐いた。

仁美「さっきも言ったけど、アタシも葵ちゃんのごはんを食べて、吸血鬼っていっても悪さをするような事は無いって思ったのよね」

すなわち、その行動を見て、話を聞いて、眼前の少女──一族の宿敵である吸血鬼を、もはや無害であると判断したのだ。


仁美「悪さしたり暴れたりしないなら、退治する必要なんて無いし」

葵「それじゃあ、見逃してくれるん?」

仁美「見逃すとか見逃さないとか、そもそもそういった段階まで話が進んでないよ」

仁美「アタシの中では葵ちゃんは、退治する対象じゃないから」

人に仇を成すことが無ければ、異形の存在であったとしても狩る対象には当たらない。
それは、退魔士を始めた時分からの、仁美の行動理念の一つだった。


仁美「それに……むしろ命拾いしたのはアタシの方かも知れないし?」

そう言って、仁美が意地悪く口角を上げると、対する葵はまだ信用されていないのかと眉根を寄せた。

仁美「だけど、葵ちゃんがそう言うなら見逃す代わりに一つだけ──」

だが、葵から抗議の言葉が出る前に機先を制する。

仁美「これからも、ごはん食べに来ていい?」

仁美の言葉を受けた葵は、面食らったように様子で発言しかけた口を半開きにし目をしばたたかせるが、すぐにその表情は綻んだ。

葵「そういうことなら、むしろお願いしたいっちゃ!」

葵「御覧の通り、お客さん少ないしね!」

そして、自虐とも取れる言葉と共に、笑顔で答えた。

──こうして、かつては命を懸けて争った者同士(片方はその子孫であるが)の、しかし現在では茶を交わし雑談に耽るような、奇妙な関係が出来上がるのだった。



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