過去ログ - アローンインマイプリズン
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11:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/04(土) 01:42:35.67 ID:kTmzGD6d0
「大丈夫ですか――?」

 目が覚める。
 また悪夢を見た。
 僅かに残された人間の頃の記憶が見せた悪夢だ。
 技師である女の言葉で目を覚ます。

「ああ。大丈夫だ――」
「――メンテナンスが完了しました」
「そうか、ありがとう」

 謎の機具から伸びて俺に繋がれた幾つもの管は全て抜かれていた。
 調律は済んで、見た目では人間そのものの姿。

「なあ、一つ聞いてもいいか?」
「はい、何でしょう?」
「俺が人間だった頃の記憶を消してくれ――」

 機械になった俺であるが、完全なる機械になったわけではなく人間の面影を残している。
 人間のように眠ることもあるし、夢も見る。
 だから一層のこと記憶を消して完全な機械へ変われればと思った。
 もうあんな悪夢は見たくないから。

「――ごめんなさい」

 しかし女は苦い顔をしてそれを拒む。

「その技術はまだ開発されていないのです」
「どういうことだ? 完全に記憶を消すことはできないのか?」

 そもそもこのサイボーグという存在自体が謎である。

「はい、まだその技術は開発されていません」
「ということは他の機甲兵にも、俺のように過去の記憶を持つ者が存在するのか?」
「個体差はありますが、完全になくしている者もいればあなたのような者もいます」
「そうか―― それでは俺は何故機甲兵になったんだ? 誰がこんな姿にした?」
「――それは」

 二度目。
 女は再び困惑した表情を浮かべる。

「ごめんなさい。それはいわゆる国家機密の範疇でお答えできません」
「わかった――」

 所詮俺は政府の犬だ。
 そんな犬に必要以上の情報は与えないということか。

「――メンテナンス後に集合するように、と司令からの伝言です」
「わかった、ありがとう」

 また人殺しか。

 俺は犬。
 犬は飼い主の命令に従順でなければならない。

 俺は再び戦場へ赴く――




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