10:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:12:55.25 ID:lE2tgw5So
冷たい雨が降り始めた頃だった。
帰りたくない、帰らないで、とことりがせがんだ。
音を立てて通学路や世界を濡らす雨は髪の毛や首回りや制服のシャツまで濡らし、
身体から体温や皮膚感覚を奪っていった。
背中に重なっては手の甲を掴んで離さない熱の感触だけがそこにあった。
ことりと接している部分だけが生きている気がした。
数十メートル先の国道交差点で遅延したバスが左折してこの道に近づく。
濁った雲に覆われた狭い視界を
ヘッドライトの強すぎる光が突き刺し
私の目を射ち抜いたとき 思わず振り向いてしまう。
自らに課した言いつけや戒めを忘れて、ことりの方へと振り向いてしまう。
おのれの過ちで命を取り落とすロトの妻のように、
愛する人を永劫に失う詩人オルフェウスのように。
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