過去ログ - 海未「サナギシェルター」
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13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:14:14.95 ID:lE2tgw5So

 作詞の進度を尋ねられたのは、
 ことりが私の背中を流し始めた時だった。

 曇りガラスを雨粒が叩く音もいつしか弱まり、
 ボディソープの泡立つ音に紛れてしまうほどだった。

「まあ、……ぼちぼちですね」

「そっかぁ、進んでないんだね」
 はっきり言わないでください、
 と口にした声がなんだか沈みすぎていて、後ろでも失笑が聞こえる。

「……水曜の終わりまでにどうにかしますよ」

 なるといいねぇ、
 なんて他人事みたいな言い方だ。
 そうですね、
 と投げやりに返す自分も他人事のようで、楽しくなった。

 浮ついた言葉がシャボンの泡みたいに浴室の空気へ立ち昇っては、消える。
 たわいない話を続けながら、
 ことりの手で身体を洗ってもらっているだけで、
 園田海未が一枚ずつ剥がれていくようだ。

 ひどく心許なくて、
 ことりの胸に背中をゆだねてしまうのも、きっと仕方のないことなのだ。




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