20:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:17:20.99 ID:lE2tgw5So
ことりはいま、何を見ているのだろう。
ちらと見えた顔は目を閉じたまま、
フェルメールが描いた女性たちのように、安らかな表情をしている。
眠そうにうつむいた影が
懐かしい毛布のように顔を覆えば、
ひとときでも朝の明るさを忘れられるだろうか。
私は風呂場に広がるタイルの線に目を移しつつ、ことりの左脚を洗ってゆく。
ことりの泡が落ちた所から
タイルの線があみだくじのように伸びて、行き着く果ては排水溝だった。
「海未ちゃん」
小さく声が降り注いだ。
「今度、どっか行こうね」
そうですね、と答えて足首を両手で洗う。
少し浮かせると、爪先が恥ずかしげに少し丸まっていく。
縮こまる指を追いかけながら、
朝顔がしぼむ時のようだと少しわらってしまうと、
ことりが不機嫌そうに足を引っ込めたりした。
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