過去ログ - 海未「サナギシェルター」
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8:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:12:02.09 ID:lE2tgw5So

 廊下の突き当たりではリビングの明るさが染み出している。
 わずかに開いたドアの隙間から、ことりのおばさまの声が聞こえる。
 校内では見せない、
 けらけらと明るい笑い声がときどき挟まる。


 小さい頃から、私たちの母はみな長電話が趣味だった。
 三人でこっそり遠出した夜、
 穂乃果と夜遅くまで逆上がりの練習をした夜、
 ことりの落とした家のカギを陽の沈むまで探した日の夜、
 家に着くと母はすべてを見通していた。

 その頃の私たちには秘密など要らなかった。
 私たちの外側で、母の大きな両腕が三人で手を繋いで、囲われている。
 そんな画が何度も頭に浮かぶ。

 影ひとつ作れないその場所は、かつてはきっと楽園だった。

 すべてを知る穂乃果は今でも、
 その温かい場所で光に照らされているのに。

 本当はことりだって、その場で照らされていられたというのに。




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