9:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:12:28.69 ID:lE2tgw5So
海未ちゃん、
とリビングから聞こえて息が詰まる。
私を呼んだのではなく、会話のうちにこぼれた言葉だ。
それなのに、
私の手がぴくんと波打って手すりを強く握りしめてしまう。
階段の手すりは冷たい。
その冷たさに跳ね返ってくる自分の手の汗は、
自覚すればたまらなく不快なものだった。
息が詰まる。
「海未ちゃん、どうしたの?」
止まってしまった私にことりが呼びかけた。
反射的に作った笑顔は
おそらくひどく不格好なもので、
向こうのことりの含み笑いを誘ったらしい。
リビングから漏れ出た光に、ことりの静かな微笑みが照らされてしまう。
その美しくゆがんだ頬は、
数時間前の雨に濡れた泣き顔とひどく重なってみえた。
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