25:名無しNIPPER[saga]
2015/04/11(土) 20:18:34.01 ID:LpvpQQI+0
鼓膜がワンワンするような、沈黙がこの空間を包み込んだ。
千早は静かに胸に手を当てた。
すると、彼女の背後に氷像が形成されていく、その姿は頭のない鳥のようだった。
「春香、ごめんなさい」
千早はゆっくりと、春香の隣を通り過ぎた。
春香はそのまま動かない。
千早はおれのことを見つめた。彼女の目からはなにも読み取れない。
ころすつもりだろうか、ぼんやりとした頭の中で考えた。
千早のいうとおり、おれはプロデューサーではない。
千早の言うことはどうしようもなく、正しかった。
おれはここで、裁きをうけるべきなのかもしれない。
彼女たちを救えると思った、罪を洗い流すために。
彼女の背後の氷像がゆっくりと目の前に降り立った。
それから吹き付ける冷気は、体を芯から凍えさせた。
いつの間にか、足首が氷でおおわれていた。
その氷は、足から上へ、上へとよじ登ってきた。
寒くて、さむくて、しかたがない。
このとき、おれが最後にみたのは、千早が彼女自身の右腕に、左手の爪を喰いこませているところだった。
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1.おわり
2.第一部、完
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