55:おまけ。蛇足[saga]
2015/04/22(水) 17:33:16.45 ID:FV4D/2Y+0
もそもそ……
勇者「消すよ」
けんじゃ「うん……」
大きな照明を落とす。
石造りの寝所を、ランプの柔らかな光が照らした。
すでに賢者は布団に潜り、もふもふの羽毛を持て余している。
勇者「横、良い?」
けんじゃ「……」コクン
もそもそ……
……
…………
それきり、話す事はなくなってしまった。
布団にふたりで閉じ込めた体温もすっかり溶け、穏やかな一体感となって僕たちを労う。
けんじゃ「……………………」
勇者「……………………」
けど、賢者はまだ起きている。
薄い呼気は耳に届くけど、きっと、なんとなく。
勇者「……起きてる?」
もそ……
けんじゃ「うん」
こっちを向いて、賢者が応える。
同じように向き合うと、90°傾いた世界で彼女だけが正しく僕を見ていた。
微動。
香り。
体温。
瞳。
きっと世界でただ一人、これだけの賢者を感じる事が出来ても、僕は今、賢者の考えてる事が分からない。
勇者「人間って、分からないな……」
ふと、そんな言葉が勝手に漏れてしまった。しまった。
伝わらないだろうし、よしんば真意が伝わったとて、無粋にも程がある。
けんじゃ「わたしの、かんがえてること?」
しかし彼女は、正しく読み取っていた。
僕が賢者を分かっていないだけで、賢者は僕の事を分かってくれているのに……。
勇者「うん。ごめんね」
63Res/50.84 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。