2:名無しNIPPER
2015/04/11(土) 21:53:20.44 ID:gC6OIYV/0
うららかな春の陽気にはそぐわない、ふてくされたような口調で曙は独り言ちる。
とはいっても、陽炎との今日の約束を曙は決して億劫に思っているわけではない。それどころか、陽炎と二人で過ごす初の休暇である。曙は昨日からどこかそわそわして落ち着かず、普段見ない曙のそんな姿に他の駆逐艦娘たちは大いに気味悪がった。
3:名無しNIPPER
2015/04/11(土) 21:54:19.69 ID:gC6OIYV/0
今日だって、遅い遅いと文句を言いながらも集合時間よりずっと前に来てしまったのは曙なのだ。
時計をちらちら見るふりをしながら、曙は服装の乱れがないか、汚れがないかとチェックに余念がない。
4:名無しNIPPER
2015/04/11(土) 21:54:49.89 ID:gC6OIYV/0
今朝鏡の前で何度もチェックをしたが、やはりこの花柄のワンピースは自分にどうしてもそぐわない気がする。
「変に思われちゃうかな…」
5:名無しNIPPER
2015/04/11(土) 21:55:24.42 ID:gC6OIYV/0
潮みたいになれたらいいのになと曙は思う。彼女の優しくておっとりとした性格は誰からも好かれるし、この可愛らしいワンピースだって似合うに違いない。もしくは皐月でもいい。少々元気すぎるのが玉に瑕だが、彼女の思ったことを素直に言える性格が曙には羨ましかった。それは陽炎のかつてのパートナー不知火と同じで、不知火も言葉は少ないが、自分の想いを言葉にできる強さがあった。
6:名無しNIPPER
2015/04/11(土) 21:57:55.34 ID:gC6OIYV/0
私はどっちにもなれない。可愛げがないし、不器用だし、感謝の言葉のつもりがついつい憎まれ口をたたいてしまう。そうじゃなかったら、陽炎だって自分のことをもっとすいてくれるに違いない。
7:名無しNIPPER
2015/04/11(土) 21:58:23.54 ID:gC6OIYV/0
「言いたいことはいろいろあるのにな…」
艦隊のつまはじきものだった自分に温かく接してくれたこと、仲間の輪に加えてくれたこと、何度も何度も助けてくれたこと、そして…
8:名無しNIPPER
2015/04/11(土) 21:59:20.06 ID:gC6OIYV/0
「ごっめーん曙―!まったー!?」
向こうから、陽炎が額に汗を浮かべながらかけてきた。曙と同じ横須賀鎮守府第14駆逐隊所属の駆逐艦娘であり、寄せ集めとまで言われた第14駆逐隊を横須賀のエースにまで成長させた嚮導艦である。
9:名無しNIPPER
2015/04/11(土) 22:02:21.27 ID:gC6OIYV/0
「遅いなんてもんじゃないわよ。いつまで待たせる気?のどが渇いて干からびちゃうところだったじゃない!」
…またやってしまった。今日、本当に大丈夫なのかしらと曙は胸の内で大きくため息をついた。
10:名無しNIPPER
2015/04/11(土) 22:02:50.01 ID:gC6OIYV/0
曙はペットボトルのお茶を飲みながら電車の椅子に腰を掛けている。待たせてしまったお詫びにと陽炎が買ってくれたものだ。今日は隣町の大型商業施設にまで足を延ばすつもりだ。
「…なによ。なんか用?」
11:名無しNIPPER
2015/04/11(土) 22:03:15.68 ID:gC6OIYV/0
曙は隣からこちらをじっと見つめる視線に気づいた。
「いやー。あんたがそういう格好してるの初めて見たけど、曙ってやっぱりかわいいわよねー」
感心したように陽炎が言う。
12:名無しNIPPER
2015/04/11(土) 22:03:45.23 ID:gC6OIYV/0
「…なによそれ。ばっかじゃなの」
どうしてこの駆逐艦はそういうことを平気な顔して言えるのだろうか。曙は熱をもって赤く染まったほほを気付かれないようにとそっぽを向く。
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