6:名無しNIPPER[saga]
2015/04/12(日) 15:50:16.31 ID:HxMRahMLo
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 生まれて初めて見る、とても綺麗な土下座でした。 
 仲居さんや女将さんが、私達の方を見て何やらひそひそ話をしています。 
  
  「あの、ひとまず顔を上げてもらえませんか」 
  
 私の方を向いた顔は。 
 風呂上がりの上気した肌が、けれど青ざめていて、そこに桶の痕がくっきりと残っていました。 
 生まれて初めて見る類の顔でした。 
  
  「こっ、この度はっ、誠に失礼極まりない行いを致してしまい……」 
  
 畳の敷かれた休憩所で、土下座する男の方と正座する私。 
 深々と下げられた頭から聞こえてくる謝罪の言葉を、私はほろ酔いのまま気分良く聞き流していました。 
  
  「……あの」 
  
  「はっ、はいっ!?」 
  
  「何で、すぐに逃げなかったんですか?」 
  
  「……それ、は」 
  
 覗きがバレてしまったのならさっさと逃げるべきです。 
 湯煙でよく見えなかったし、言い逃れ出来ない状況でもありませんでしたし。 
 なのにわざわざお風呂上がりの私を探して、綺麗な土下座を決めてくれて。 
  
  「先程の言葉と、何か関係が?」 
  
  「…………はい」 
  
  「アイドル、でしたっけ」 
  
 歌って踊れる女の子。 
 私とは住む世界が違うけれど、とっても素敵なお仕事だと思います。 
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