過去ログ - アストルフォ「ボクがジークを幸せにするんだ!」
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2: ◆BAKEWEHPok[saga]
2015/04/14(火) 00:02:45.98 ID:RAbBuj+Vo
「マスターはね、もっと自分を大切にすべきなんだよね」

聖杯大戦決着も近い深夜。
ブカレストの隠れ家にて、アストルフォこと黒のライダーはずずずっと
迫り来るように主人でもあり友人でもある少年へと告げた。
向けている目は座っており、どこか剣呑な雰囲気を醸し出している。
それはライダーが隠れ家で発見した度数の強い蒸留酒やワインによる酔いの影響。
魔術師が趣味で秘蔵していたものか。
地下にある倉庫にはたっぷりのアルコールが揃っており、酒宴をするには十分の量があったのだ。

「飲みたい飲みたい飲みたい! 決戦前にパーッと景気良くいこうよ!」

決着間近とはいえ待機の時である今、そう主張するライダーに強く反対する理由は
ジークにはなく、ルーラーは反対の意思を見せたもののジークとライダーだけに酒宴されては
疎外感を感じるのか、ワインだけならと参加することになった。

そうして宴もたけなわ、ルーラーがレティシアの身体のためか早めにダウンした後
突然ライダーがジークを寝室に引っ張ってから一言目に放った台詞がそれである。
普段の快活で明るいライダーにはらしからぬ強い物言い。
そこには酔いの勢いだけではない真摯な響きも感じ取れた。

「……? どういう意味だライダー」

銀髪でルビーの瞳を持つ少年ジークは首を傾げる。
何を言っているのかよくわからないと言った表情。
気分が多少高揚しているようだが酒に強いらしく理性ははっきりとしているしライダーが真剣なのも伝わっている。
それでもライダーの言いたい事はわかっていないようだ。

ジークは困り顔を作った。
ライダーが無茶な事を言うのはいつもの事だが、流石に欲張り過ぎるだろうと思ったのだ。
英霊ジークフリードの心臓を受け取って一時的に英霊になれるとはいえ、所詮はまがい物。
その力が純粋な英霊に匹敵はすれど上回るとは間違っても言えるはずもない。
扱うジークの心と精神はまだまだ未熟で、仮初の手が全てを拾い集めるにはあまりに不完全だった。

「ボクだって無茶を言っているのはわかってるんだ。これは心構えの話。
 戦力の足し算や引き算じゃなくてマスター自身に生き伸びたいって思って欲しいんだ」
「俺だって死にたいわけじゃない。ライダーが一番知っているだろう」

ホムンクルスの少年が生まれてから最初に願ったものは、赤子の泣き声にすら劣る言葉にもならない呼びかけ。
目の前にいるライダー以外、そこに意味を感じる者はいなかった。
魔の部品でしかなかった彼が今ここに在る奇跡はライダーが生まれたばかりのジークを見つけてくれたから。
ホムンクルスの仲間達の慈悲。ジークフリードの心臓。繋がった奇跡はライダーが導いてくれたもの。
生きたいというジークの想いを知らないはずもない。

「わかってるよ。マスターの生きたいって意思がマスターを救ったんだから。
 でも……うん、もうマスターは生命を捨ててどうにかなるかもしれない。
 それか生命を捨ててでもどうにかしたいって場面では迷わないと思う」
「……」
「前も話したよね。マスターは頑張りすぎなんだよ。マスターが向こう見ずの怖いもの
 知らずってならまだいいのに、怖いくせに頑張り過ぎるから困るんだ。
 前みたいにホムンクルス達を助けたり、サーヴァントを倒すために死んじゃいそうでさ……ボクはそれが怖いんだよ。
 理性がどっかいっちゃってるボクを怖がらせるだなんてホントマスターは相当だよ」
「そう言われてもな……仲間を助けれるのに俺一人の生命で済むのなら妥当だ。報うだけの価値がある。
 それに半端な俺が生き延びるよりもライダーやルーラーが闘えるほうが勝算があるし
 仮令相打ちでも赤のサーヴァント達を倒せるのならばお釣りが来るだろう」
「ストップ! そういうのがダメなんだ! 助けるにしろ倒すにしろマスターが生きてないと意味がない!」
「そうできるのならば最善だろうが…………」


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