過去ログ - アストルフォ「ボクがジークを幸せにするんだ!」
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3:名無しNIPPER[sage]
2015/04/14(火) 00:05:03.10 ID:RAbBuj+Vo
ジークは困り顔を作った。
ライダーが無茶な事を言うのはいつもの事だが、流石に欲張り過ぎるだろうと思ったのだ。
英霊ジークフリードの心臓を受け取って一時的に英霊になれるとはいえ、所詮はまがい物。
その力が純粋な英霊に匹敵はすれど上回るとは間違っても言えるはずもない。
扱うジークの心と精神はまだまだ未熟で、仮初の手が全てを拾い集めるにはあまりに不完全だった。

「ボクだって無茶を言っているのはわかってるんだ。これは心構えの話。
 戦力の足し算や引き算じゃなくてマスター自身に生き伸びたいって思って欲しいんだ」
「俺だって死にたいわけじゃない。ライダーが一番知っているだろう」

ホムンクルスの少年が生まれてから最初に願ったものは、赤子の泣き声にすら劣る言葉にもならない呼びかけ。
目の前にいるライダー以外、そこに意味を感じる者はいなかった。
魔の部品でしかなかった彼が今ここに在る奇跡はライダーが生まれたばかりのジークを見つけてくれたから。
ホムンクルスの仲間達の慈悲。ジークフリードの心臓。繋がった奇跡はライダーが導いてくれたもの。
生きたいというジークの想いを知らないはずもない。

「わかってるよ。マスターの生きたいって意思がマスターを救ったんだから。
 でも……うん、もうマスターは生命を捨ててどうにかなるかもしれない。
 それか生命を捨ててでもどうにかしたいって場面では迷わないと思う」
「……」

即座の否定はできなかった。
知ってしまったのだ。
ただ生きるだけではない英霊達の信念に満ちた在り方を。
魔翌力供給電池としての存在意義でしかなかった自分の生命なぞよりよほど尊いだろう。

とは言ってもただで死ぬつもりなどはない。
取れる手段と時間があれば自身を代償にしない解決手段を探す。
けれどそれしかないという瞬間があれば、刹那にだって身を投じるに違いない。
もし目の前にいるライダーがどうしようもない危機に陥ったとして、それが防げるのならば
見過ごすなど到底できるものではなかった。
仮令それが共倒れになる結果だとしても、迷いはしないだろう。

「うん。マスターはそれでいいんだ。これはボクのわがまま。そんなマスターがボクと……いやボクは好きなんだからね」
「……ありがとうライダー」
「マスターがそうしたいのは止めれないからね。ほんっと強情なんだから。
 …………でもね。マスターが生きたいと思う手助けはボクにもできるんだ」
「今更何を。ライダーが助けてくれたから今の俺が在る」
「そういう意味じゃなくて……いいや」

ライダーの言葉と共に鎧を外していた黒の衣装が代わり、街を散策していた時の私服へと変わった。
臍を覗かせる丈の短いストライプシャツ。紫の色をしたうさ耳のついたパーカー。
黒のプリッツスカートと足を覆うタイツは細くて長い脚線を綺麗に映しだしている。
実態はともかくとして、そのプロポーションは胸が小さめの可憐な少女そのものの姿だ。

「何故服を?」
「いいからいいから。座って座って」

妙に軽くて適当な返事。
何か雰囲気というか空気を投げ捨てたライダーはジークをベッドへ座らせて、自身も隣へと腰を下ろす。
頭半分ほど高いジークへと腕組して寄り添った。

「ライダー?」
「しょうがないんだけどジークは経験が不足してるからね。
 ボクが色々教えてあげないといけないんだ」

衣装の切り替えと共に呼称が変わる。二人の様子はさながら年若い恋人のよう。
ただ少年のほうはライダーの言葉の意味がなんのことだかわかっていない。
ライダーのくりっと大きい紫の瞳には元々乏しい理性的なものが消えていて情熱の光を帯びている。
ギラギラっとした欲望が溢れ出しそうなほど危険な輝きを放っている。

「ジーク……」
「ん、んんっ……!?」

唐突に、ライダーはジークの身体を抱きしめて唇を奪った。
感じた事のない柔らかな感触がジークに触れた。

「……ジークどう?」

ちゅっ、ちゅっ、としばらくそうしていてライダーが離れると驚きでジークは固まったまま。
反応が無いのでライダーがまたキスしようとした所で

「待て、待ってくれ。いきなり何をするんだライダー」

ようやくのように言葉を発した。


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