過去ログ - 卯月「総選挙50位以内に入れないアイドルはクビ…ですか?」
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37:名無しNIPPER[saga]
2015/04/16(木) 16:07:57.96 ID:AC0SMIbio
 くすくすと、口元に手を当てて鈴のように笑う、ちひろさんのやわらかな笑顔は、部屋の重苦しい空気とはひどくミスマッチなものでした。

「社長さんから、アイドルのみんなには、ちゃんと余すことなく要件を伝えることって、言われているんでしょう?」

「……」

「さぁ、続きを、どうぞ」

「……」

 プロデューサーさんはこれ以上ないほど窮屈に閉じた瞼をさらに無理やり閉じ込めて。
 意を決したように眼を見開いて、また書類に目を落とし、続きを読み上げ……。

「島村さん」

「ひゃっ?!」

 ……るかと思いきや、私の顔をまっすぐと、けして揺るがない瞳で見つめてきました。
 今日、初めて目が合いました。初めはとても怖かったけれど、今は好きな、プロデューサーさんの真摯でまっすぐな瞳。

「お願いが、あります」

「は、はいっ! なんでしょう?!」

「笑顔です」

「えっ……?」

「貴方の得意の、笑顔を、お願いします」

「……?」

 あまりに突然すぎる要求に頭の中にはたくさんのハテナマークが浮かびました。
 けれど、プロデューサーさんの真剣な態度はなんだか冗談ではない、みたいです……。

「は、はい……それじゃ……こほん……」

 ちょっと恥ずかしいですね……。

 えっと、顔の前で両手でピースサインを作って……。
 最高の笑顔をするためのヒケツ。
 それはみんなの幸せな顔を思い浮かべること。
 
 プロデューサーさんが、凛ちゃんが、未央ちゃんが、みくちゃんが、アーニャちゃんが、みりあちゃんが、みんなみんなずっと笑っていてくれますように。

 ──みんなの笑顔で私が笑顔に。

 ──私の笑顔でみんなが笑顔に。

 ──せーのっ


 
「ぶいっ♪」





「ありがとう、ございます……」

 ほんの微かですが、プロデューサーさんの口角が上がったのを見て、私は胸の奥でじんわりと暖かな気持ちが溢れてくるを感じました。

「お願いです。どうか、これから何があっても」

「は、はい」

「その笑顔を、絶対に、忘れないでください……」


「とっても素敵な笑顔でした♪」

 ちひろさんも手をぱちぱちと叩いて、私の取り柄の笑顔を褒めてくれました。えへへ、うれしいです。


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