過去ログ - 【Fate】カルナ「安価で聖杯戦争―――是非もなし」 -SS速報VIP

過去ログ - 【Fate】カルナ「安価で聖杯戦争―――是非もなし」

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10: ◆.thx41UQwK3a[saga]
2015/04/21(火) 02:20:52.74 ID:S3f7csrOo

時刻は、深い夜。いや、ここまでくれば明け方と呼んでも良い。没し掛けるのは、夜の象徴たる黄金の真円―――満月。
地平線の向こうからは、黎明の時を示す太陽が昇り始める。夜と、朝を生きる者平等に始まりを告げる黄金。

その黄金を背に、一人の男が新都を歩いていた。
カシャン、カシャン、と、無骨な甲冑音を響かせて、夜とも朝とも付かないこの優美な世界を逍遥していた。

男は、天を突くかのような総髪をしていた。身に召すのは男の財力を顕すかのような身に纏った金色の甲冑。
蛇のように鋭い紅の双眸は、険しい表情も合わさり近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。

それが男の出で立ちだった。日本人離れであり、芸術的とも言える端正な顔立ち、深紅の宝石よりも輝きが勝るその眸。
目立たない訳がなかった。男は、この平凡的な、日常的光景に溶け込めない、まるで異物だった。

だからか。自らに声を掛ける人間が後を絶たない。
この時は、己が生まれ持ったカリスマを呪いながらも次なる無礼者を思慮してみては、辟易するのであった。

「ねぇねぇアンタ、そうだアンタ。それコスプレ？」
―――案の定。好奇心から、声を掛けられた。対する男は、どこまでも無言。眉根に潜ませた皺を更に険しくするだけ。
「おい！無視すんなよ！お前――」
男が怒りに身を任せ、無表情のままこの場を去ろうとしていた男の肩を掴んだ瞬間。
ザクリ。聞き慣れない音が、耳を付いた。続いて、赤い水彩絵の具をぶち撒けたかのように、朱色に染まっていくコンクリート。

鉄のそれよりも、尚も強い香。男は、一瞬自分の身に何が起きたか分からなかった。
嫌な予感を抱きながらも、スプリンクラーのように朱をまき散らす先を見てみれば、有ったはずの自分の右腕が肘から先が消えていた。

代わるかのように、月よりも余程綺麗かつ鋭利な黄金の剣が肘から先に有った。その剣先は、大地へと向けられ突き刺さっていた。
「ぎゃあああああああ！！！！」
理不尽な暴威に、悲鳴を上げる男を余所に、総髪の男が眉根に皺を潜ませたまま、貯められた怒りを露わにした。

「軽々しく我に触れるでない！貴様ら凡百の生命を万積み上げようとも、我が価値には及ばぬと言うに…！」
男の背が歪む。更なる量と密度で形成された黄金の弾幕を目にした時、男はこの総髪の男に声を掛けた己を呪った。

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