過去ログ - お題ください、ショートショートします
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31:名無しNIPPER[saga]
2015/04/30(木) 16:14:23.54 ID:FqSE0XcJ0

徳川家康にとってそれは、何でもない事だったに違いない。

「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス」

かの名将は待って待って待ち続けて、200年と言う泰平の世を手にしたのだった。


彼の築いた栄光が終わり時代が流れ、平成になると人は待てなくなった。

信号機には待ち時間の残りが表示され、電車が数分前後するだけで辺りは大混乱。


かつて家康公が望んだ世の中ではないだろう、時間にがんじがらめに縛られた生活が1億3000万人を苦しめていた。

泰平もほどほどに自らに鞭打って、まだ日も出ないうちから起き出して仕事に精を出す。


さえずりすら聞こえない機械音の中、茶を飲む暇もない。

息苦しい平成だ。


そんな折、暇を見つけて博物館へ足を運んだ。

何を思ったか一現代人は、ゆっくりとした時間を欲しがったらしかった。


中はクーラーも効いて涼しい。


特集だなんだと言って「期間限定」で飾られていた家康公は、そのクリオネみたいな真っ黒い袖をゆったりと脇息に預けてそこに描かれていた。

あー昔は良かったなぁ、なんて、生まれても居ない時代を想う。


今となっては彼の生きた時代は完全に過去のものになってしまった。

儀式のように信号機の色が変わるのを待っては、行きたくもない会社へ時間通りに行く。




明日からもそんな毎日だと思うとなんだが家康公にもムカついてきて、ホトトギスの鳴かない現代に生きる私はたまらず博物館を飛び出した。

家康公と同じ真っ黒な袖の付いたスーツが、走るのに合わせて腕の中で上下していた。


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