過去ログ - モバP「知らない誰か」
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5:名無しNIPPER[saga]
2015/05/03(日) 18:56:51.74 ID:JTjg/O5n0
 『B君』


 ほんの少し笑顔が素敵なだけの、普通の女の子。そう思っていた。

 姿を見ない日はない。声が聞こえない日はない。

 普通の女の子だから、当然、学校でボクなんかの隣に座っていたっておかしくない。

 その日常が終わってしまって、もうどれくらいになるだろう。

 アイドル『島村卯月』の登場と引き換えに、ボクの隣の席の少女が、ボクの隣に座る時間は、どんどん少なくなっていった。

 彼女はいつも明るくて、頑張り屋さんで――未来を『何か』考えているとは、とても思えなかった。

 だから彼女は、きっと何も変わらなくて、次の席替えまでは隣に座っていて、卒業まではこの学校にいるだろうと思っていた。


 ある時友達と、ライブを見に行こうということになった。

 ボクたちはひとり7,000円ずつ支払い、アリーナの外苑から、ステージ上の豆粒みたいな彼女の挙動を、目を凝らして追った。

 今やそれが、正しい位置関係だった。

 野外スクリーンにいっぱいに写った彼女の笑顔は、この上なく、特別に、素敵だった。


 ほんの少し笑顔が素敵なだけの、普通の女の子。そう思っていた。

 特別になった女の子は、当然、学校でボクなんかの隣に座っているはずがなかった。

 

 今日は席替えだ、

 きっとそのことを彼女は知らない。 


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