過去ログ - 唯「平沢唯は、転ばない」 -SS速報VIP

過去ログ - 唯「平沢唯は、転ばない」

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1:名無しNIPPER
2015/05/05(火) 20:47:12.11 ID:jGyXdBvgO

りっちゃんと部室のベンチに向かい同士で座って天井を見上げてた。

お互いに何も言わない沈黙を先に破ったのはりっちゃんだった。

律「なぁ、唯。ここは平和かなぁ」

唯「なにそれ。どーゆーいみー？」

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2:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 20:48:14.89 ID:jGyXdBvgO
律「意味なんてないよ、ただ、平和かなぁって思っただけ」

りっちゃんはボケーっとバカみたいな顔をして、
それなのに私の視線を感じ取って目が合った瞬間、
困ったように笑った。

3:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 20:48:57.75 ID:jGyXdBvgO
唯「だからさ、紙にマル描いて切り抜いてさ、粘着テープを裏側に貼り付けて

『あ、ここ平和だったらいいのに』

って思ったとこに張ってけばいいんじゃないかな」

4:名無しNIPPER[sage]
2015/05/05(火) 20:49:28.61 ID:jGyXdBvgO
次の日。

珍しく朝練をしようと部室にやってきた私がみたものは、
部室のドアに貼り付けてある、
マルの書かれたポストイット。

5:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 20:50:27.22 ID:jGyXdBvgO

---

唯「ねぇ、澪ちゃん」

6:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 20:51:18.05 ID:jGyXdBvgO
澪「まぁ、1年生の時に比べたらマシになったんじゃないか？」

唯「うん。私もそう思う」

澪「思うなら聞くなよ」

7:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 20:52:03.62 ID:jGyXdBvgO

澪「そうだった」

唯「歌うのは楽しいよ」

8:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 20:52:56.65 ID:jGyXdBvgO

ごみ箱は腕の中でカサカサ音を立てていた。
この中のものだって最初っからごみだったわけじゃない。
役目を終えたから、みんながポイって捨てちゃったんだ。

9:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 20:53:46.00 ID:jGyXdBvgO
「平らな和は立体的じゃないから、転がらない。
どこにも行けないけど、でもだからこそ、
そこに居続けることの難しさを知っている尊い和だ」

りっちゃんが教えたのかもしれないし、教えていないのかもしれない。

10:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 20:54:28.48 ID:jGyXdBvgO

ゴミ箱の中身はパラパラだったりコロコロだったりして、
床に転がって散らばっていく。

でも、そこにあり続けた。

11:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 20:55:10.51 ID:jGyXdBvgO

---

ムギちゃんに「軽音部どんな感じ？」って唐突に聞いてみた。

12:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 20:55:53.73 ID:jGyXdBvgO
間髪入れずに答えは返ってきた。

紬「絶対に守りたい場所よ」

唯「絶対に？」

13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 20:56:34.76 ID:jGyXdBvgO
紬「うーん、敵がいるのかしら」

ムギちゃんはムムムと唸る。

唯「守りたいってそういえばどういうこと？」

14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 20:57:21.46 ID:jGyXdBvgO

紬「絶対に守りたいって言ったけど、なんというのかしら。
攻撃的な感じではなくて、あれなのよ。
そのままでいてほしいって気持ちが強いの、軽音部にとって、
私は特に」

15:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 20:58:11.74 ID:jGyXdBvgO

軽音部に入った。

ギターを買った。

16:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 20:58:48.76 ID:jGyXdBvgO
マルはマルのままで転がるはずはないのに、
私たちは手を取り合って丸くなっても平坦ではいられない。

転がり続けて、止まらない。
崖の先には、ダストボックス。

17:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 20:59:33.78 ID:jGyXdBvgO

唯「変わっていい変わると、変わっちゃいけない変わるがあるみたい」

紬「そうね。私もそれに気づいたの。つい最近まで知らなかったけど」

18:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 21:00:22.76 ID:jGyXdBvgO
私たちは、崖から転がらないように和を転がすと同時に
自分たち自身も転がって、
まるで和か転がってないように見える環境の中に身を置かないといけないのかもしれなかった。

唯「ねぇ、それめんどくさくない？」

19:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 21:01:13.44 ID:jGyXdBvgO
次の日部室に行くと、
りっちゃんがポストイットで描いたマルの上の部分が少し消されて、
三本の湯気が出ていた。

ムギちゃんの仕業だな。

20:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 21:02:10.10 ID:jGyXdBvgO

---

その日。
私は部室のドアを開けて入ってきたあずにゃんに抱きつこうとして、

21:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/05(火) 21:02:52.95 ID:jGyXdBvgO
唯「いたたた、みんなもう少し私の心配をしてよ」

グスンと鼻を鳴らして私は1人で起き上がろうとした。
そんな私の前にスッと差し出されるあずにゃんの小さな手のひら。

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