過去ログ - 扶桑「私たちに、沈めとおっしゃるのですか?」 提督「そうだ」
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172: ◆bBUdJHUgklsz[saga]
2015/08/08(土) 21:01:44.11 ID:3Sf6fHgI0

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「あなたは、残りなさい」

 扶桑の口から出た言葉が、鋭く、深く、突き刺さった。
 それは容赦ない切り捨ての言葉。
 
「今のあなたじゃ、居ても居なくても同じだから」
 
 足手まといだ、と愛する姉に言われてショックじゃないわけがなかった。
 その言葉、眼差しが、冷たく山城を射る。


「なんで、ですか……」 
 
 そう答えるしかなかった。
 厳しい言葉に、冷たい視線に、耐えて。
 しかし、内心そう言われることも仕方がないとさえ感じた。
 
 姉の覚悟を知った。胸に秘めた熱い思いを、知ってしまった。
 死を厭わず、皆を守る戦に出られることが幸いだと。
 玉砕覚悟の無謀な作戦だと、無意味な死だと後世に伝えられてしまうかもしれない。
 敵の罠に嵌ったがため、ヤケクソな特攻作戦で沈んでいった哀れな艦娘だ、と。
 
 名誉も武勲も何もなく沈む、そんな可能性だってあるのに、いやむしろその可能性のほうが高いのに。
 
 それが誉だという。
 それが艦娘としての矜持だという。
 一花咲かし、死に場所にこの海を選ぶことが。
 
 戦う機会さえ与えられなかった自分が、最後に戦場に立つことができる。
 それが、最悪の戦場であっても、だ。それだけの覚悟が、扶桑にはある。


 対して自分はどうだ、と山城は自問する。
 自分に、姉のような覚悟があったか、と。
 皆を守るために、我が身を省みず勇んで行くことができるかと。
 
 答えは明白で、悩む余地すらない。
 姉は熱く静かに戦う意思を燃やしているというのに。
 
 惨めに、メソメソと。 
 作戦内容を聞いて、死を背に受けてただ恐怖に身がすくんだ。
 皆の、大好きな家族のために戦おうとすら思わずに。



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