過去ログ - 扶桑「私たちに、沈めとおっしゃるのですか?」 提督「そうだ」
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98: ◆bBUdJHUgklsz[saga]
2015/05/24(日) 20:06:32.11 ID:oYOqZ1YP0

 皆、口々に言葉をかける。
 頑張って。待っているよ。無事に帰ってきてね。
 いつも通り平静を保って言葉をかけるよう努めた。
 しかし、それが出来ている者はいなかった。
 身体も声も震え、泣きそうな顔を皆懸命に押し殺して。
 それでも漏れてしまう悲しみ。痛みを、隠し通すことなどできなかった。
 
 それでも、一縷の希望にすがって、皆別れの言葉だけは言わない。
 夢物語であろうとも、非現実的な超展開であろうとも、笑えるくらい都合のいい結末であろうとも。
 最高の結末だけを思い浮かべ、望んでいた。
 皆、扶桑と山城の笑顔だけを望んでいた。

 だが、強くそれを望んでも、現実が嘲笑ってくる。
 起こるわけ無いよ、そんな奇跡。と馬鹿にするかのように。
 奇跡は起きないから奇跡なのだと、誰かが言った。
 希望は月明かりのように細く、闇に掻き消されそうなほど淡い光だ。

 だけれども。そうだとしても。
 それさえないとするならば、人はどうして生きていられようか。
 誰もが、もがき苦しんでいる。絶望の海に投げ込まれたとしても、皆その光だけを頼りにするのだ。
 その光だけを頼りに、その光だけを目指して足掻く。
 
 悲しみと絶望の闇で、彼女たちは笑えるくらい幸福な結末を思い浮かべる。
 そうすることでしか、笑うことができないから。
 そうすることでしか、安心させることができないから。
 そうすることでしか、心残りなく送り出せそうにないから……。





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