11:野良猫 ◆oiBB.BEDMs[saga]
2015/05/06(水) 10:45:56.67 ID:JvRyHgVUO
こうして、一年生3人による限定ユニットが誕生し、これから入学を考える子にとってインパクトのあるものには確かに仕上がった。
入学して半年程度でこれだけのパフォーマンスが出来るのだと知れば、"私にも"と、入学したいと思う者も多いだろう。
「うわぁ〜3人ともすごーい」
「あんなのよく出来るよねぇ」
「あんじゅちゃんの歌、すっごく上手い!」
と、3人の友人にも好評な様子だ。
「こんなの見たら入学したくなるよねぇ」
「なんか、私にもって錯覚しちゃいそう」
「私はムリだけどね〜」
けらけらと笑いながら、3人は思い思いの感想を述べていく。
そんな中、スクリーンに映る自らのパフォーマンスを眺めながら、愕然とした表情を浮かべていたのは、他ならないつばさ自身だった。
「あれ、どったの?」
そんなつばさを見た友人の1人から声をかけられて、つばさはハッと我に帰った。
「ごめんなさい、なんか自分をこうして見るのは初めてだったから」
「そりゃそうか〜」
納得した様子の友人に、内心でほっとしながらも、つばさの目はスクリーンに映る自らの表情を的確に捉えていた。
(私はいつから……)
そして、映像が終わり、暫くの間談笑した後に鑑賞会はお開きとなった。
「またね〜♪」
「つばさ〜頑張ってね!」
「あんじゅちゃん、今度は一緒にカラオケいこーね!」
それぞれに別れを告げて、友人たちを見送ったつばさとあんじゅは視聴覚室へと戻っていった。
「いつから?」
「えっ?」
「あんじゅは気づいていたのよね? 私の変化に」
唐突な問いかけに、あんじゅは返答に詰まる。
つばさが言っているのはステージで踊る自分自身の表情、そして記憶の事だった。
流石に記憶の事まではあんじゅには分からなかったが、つばさが何を言わんとしているのかは理解出来た。
「そう……ですね。私が気づいたのは、たしか、3ヶ月ほと前の定期ライブの時でした」
それは丁度、つばさがあんじゅと出会う少し前の事だ。
候補生は日々の成果を定期的にライブという形で一般にも含めて公開するのが決まりになっている。
学院の顔ともなるスクールアイドルの候補生である以上、常に見てくれる人を楽しませる努力は絶対に必要だからである。
それはただ決められた演目を忠実に再現すれば良いというものではない。
「分かっているつもりだった……」
そうなりたくないと思いながらつばさはこれまで練習に励んで来た。小さい頃に見たアイドルに憧れたその日から、ステージで見せる表情とダンスは真実であるべきだと思い描いて来た。
たとえそれが偶像<アイドル>だったとしても、ステージに立つ間だけでも1人の人間でありたいと願っていた。
「ごめんなさい。もっと早くお伝えするべきでした」
あんじゅが震えた声でそう言った。
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