過去ログ - ちひろ「No price」
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1: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:12:31.88 ID:Ali87vP20
 
※地の文あり
 
今度は、値段が見える彼女のお話。

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2: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:13:58.61 ID:Ali87vP20
私が今使っているボールペン、500円。

もう三年近く愛用している事務机、3万5千円。

「おはようございます、ちひろさん」
以下略



3: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:15:28.97 ID:Ali87vP20
「おはようございます、プロデューサーさん。今日は休日じゃないんですか?」

この世の全てのものには値段がつけられる。

それを知ったのは、数年前の事。
以下略



4: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:17:20.71 ID:Ali87vP20
「久しぶりにスカウトに赴こうかと」

数十億の値札がついたあなたはそう言って笑った。

「そうですか。また、いい子に会えるといいですね」
以下略



5: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:19:03.92 ID:Ali87vP20
「……そうですね。こことかどうでしょうか」

並べられた値札の中から、東京を除いて特に高いものの中で近場をチョイスしていく。

それは県自体の値段なので、決してそこに住んでいる人間の価値ではないものの、そうするのが一番無難だろうと。
以下略



6: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:20:51.51 ID:Ali87vP20
「なるほど……参考になりました。是非行って見ます」

いくつかの県にマークをしたプロデューサーさんは、地図を片付けるとすぐに仕事に取り掛かった。

そういえば私にも、価値が測れないものはやっぱり存在する。
以下略



7: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:22:04.18 ID:Ali87vP20
だって値段がないという事は。

「いくら払えば、私のものになりますかね」

誰にも聞こえないよう、そっと自嘲気味に言う。
以下略



8:名無しNIPPER[sage]
2015/05/09(土) 21:23:33.94 ID:VqBOYSiDO
面白い


9: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:23:41.95 ID:Ali87vP20
あのビルは5億円。

我がプロダクションは2億円。

やはりそろそろ、プロダクションを大きな場所に移転するべきだろうか。
以下略



10: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:25:06.46 ID:Ali87vP20
ふと、窓ガラスに映った私を眺めてみる。

オーダーメイドの事務服、4万円。

こっそりオシャレしてみた髪留め、2千円。
以下略



11: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:27:10.57 ID:Ali87vP20
どんなに綺麗なもので着飾っても、私の価値は誤魔化せないみたい。

「お待たせしました!」

プロダクションからプロデューサーさんが鞄を持って出てくる。
以下略



12: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:29:09.13 ID:Ali87vP20
そうですね―――と再び地図を広げるプロデューサーさん。

「日帰りだとこの辺りですかね」

「そうですね。それが妥当だと思います」
以下略



13: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:30:25.21 ID:Ali87vP20
そしてよもや追い抜こうかという時、ふらふらと空中を彷徨っていた彼の手を握る。

「ち、ちひろさん?」

「プロデューサーさんはどうも私がいる事を忘れて歩いてしまうみたいですから。首輪みたいなものです」
以下略



14: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:32:07.82 ID:Ali87vP20
「ちひろさん、お話があります」

あれから数日後。

今日も値札に囲まれた一日も終わろうとしている、二人きりの事務所で。
以下略



15: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:33:48.75 ID:Ali87vP20
少し、想像してみる。

数年後の私は、何をしているんだろうか。

また、値札に囲まれた生活をしているのだろうか。
以下略



16: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:35:58.10 ID:Ali87vP20
「……俺と、付き合っていただけませんか!」

突然、ばっと目の前に小さい正方形の黒色の箱を差し出される。

40万円……?もしかして、この中に入ってるのって。
以下略



17: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:38:37.49 ID:Ali87vP20
そこにあったのは、小さな小さなダイヤモンドがはめ込まれた指輪だった。

「……ふふっ」

「な、何か変でしたか?!」
以下略



18: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:40:48.80 ID:Ali87vP20
「もし私に振られたら、この指輪どうするつもりだったんですか?」

「く、クーリングオフを……」

「流石にそれはもったいないです。せっかくの指輪なんですから」
以下略



19: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:43:55.06 ID:Ali87vP20
それは世界にあるどんな指輪よりも、どんな物よりも、高いものに見えた。

「ありがとうございます。私も好きです。プロデューサー、さん」

窓越しに月明かりが事務所の中に差し込んでいる。
以下略



20:名無しNIPPER[sage]
2015/05/09(土) 21:44:56.36 ID:VqBOYSiDO
ちっひおめでとう!


21: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/05/09(土) 21:45:31.89 ID:Ali87vP20
言葉が見える彼女のお話
 
楓「飴の降る町で」
ex14.vip2ch.com
 
以下略



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