621: ◆v5iNaFrKLk[saga]
2015/08/07(金) 23:21:55.51 ID:7a6qOlBf0
虹色大橋を渡りきると、芝浦の下り連続コーナー。
直線で離された分を少しでも取り戻そうと、夕張は持ちうる力の全てをぶつける。
右、左、そして右……スリッピーな路面も相まって、都高でも屈指の難所である芝浦コーナーを丁寧に捌いていく。
抜ける頃には僅かではあったが、その差は確実に埋まっていた。
初戦の赤城の時とは違う。
自分の走りが出来ている。
そして、ちゃんと成長している――!
テールを追うな。前を見ろ。
いつか提督に投げかけられた言葉を頭の中で復唱する。
特徴的なリング状のテールランプはまだ遠い。
それを追ってはダメだ。目指すのはその先だ。
クルマは自分が向いた方向にしか進まない。
ハンドルを握る手は、若干汗ばんでいた。
夕張「内回り……集中集中」フー
由良「うん。空燃比、排気温度、共に問題無し。まだ行けるよ」カタカタ
夕張「了解!お願い、ワンエイティ――ッ!」
環状に入っても夕張の集中力は途切れない。
それどころか、この緊張感が心地良くさえ思えた。
その原因はやはり、前を行く魔王Rによってもたらされたものだろう。
あまりの速さから魔王と恐れられた、迅帝と並ぶアンダーグラウンドの主。
しかし名前とは裏腹に、摩天楼の灯火に浮かぶ姿は無骨な印象の強いR32とは一線を画す。
どこまでも深く、見ていれば溺れてしまいそうな……妖艶とも取れるブルー。
それはこの都高が持つ独特の空気に飲まれているのか、あるいはRの魔力によって脳髄から犯されてしまったのか。
夕張「怖い話とかさ、時々無性に見たくならない?」
由良「どうしたのよ急に」
夕張「私が思うに……あれって現実の延長線上にある非現実を、少しでも垣間見たいっていう意識が何処かにあるんじゃないのかなって」
夕張「何であのクルマが魔王と呼ばれているのか……少し分かった気がする」
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