733: ◆v5iNaFrKLk[saga]
2015/08/24(月) 22:54:21.82 ID:M9OwOe9r0
夕張「こ、こんばんわー……朝日さん、いらっしゃいますかー……?」キョロキョロ
鉄製の重い扉を開くと、埃と油の匂いが鼻につく。
朝日さんからの反応は無く、私の声だけがガレージ内に反響する。
留守だろうか?
しかし、奥で白熱灯が光っている……気付いていないのだろうか。
足元を確かめつつ、ソロリソロリと歩を進めつつ、辺りを見渡した。
それにしても、なんという設備だろう。
低床のリフト、大型のサンドブラスター、溶接機材に金属加工用の旋盤まである……隔離された空間はエンジンブース?
薄暗いので正確なことは分からないが、確認できただけでもコレである。
プロのショップでも、ここまで充実しているのは珍しい。
「ほえ〜……イチからレーシングカーも作れそうね……」
しかし、鍵も掛けないとは随分不用心だ。
現在時刻、フタマルヨンイチ。
この時間なら居ると言っていたのに……今回は出直した方が良いかもしれない。
――コトン。
「朝日さん?」
ふと物音がする方へ向かうと、淡い光に照らされる魔王Rが佇んでいた。
作業中だったのかボンネットは開けられ、フェンダーの両側には傷予防のカバーが掛けられている。
暗闇に慣れた目には、魔王Rの濃いブルーメタリックは恐ろしく鮮やかで妖艶に思えた。
最初に見た時に感じた「刃物の様な空気感」は和らいでいる。
しかし、ひとたび魅了されてしまえば水面の奥底に沈んでしまいそうな……。
それは、このクルマが持つ魔力というか毒性の質が変わっただけで、依然として危険な存在には違いないことを意味している。
それでも目が離せない――。
離せるわけがない。
魔王Rはただ静かに、その時を待っているようだった。
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