791: ◆v5iNaFrKLk[saga]
2015/09/30(水) 20:27:39.18 ID:GTgWNRrF0
空港トンネル手前――。
規則的に並ぶ水銀灯の光は白く線を引き続ける。
まるで往年の縦スクロールシューティングの様に景色が飛んでいく。
それだけで、今このクルマは非常識的なスピードで走行していると理解できた。
大井JCTから続く長い直線からの左コーナーは、一見すると緩やかなカーブだ。
しかし魔王・迅帝・戦艦の超弩級とも云うべき三台のマシンには、このカーブでさえも恐ろしい急カーブになる。
ただでさえスピードが乗りやすい区間。
加えて東海JCTを過ぎてからの下り勾配。
三台の速度は、既に300キロに迫っていた。
……未知の領域だ。
近い速度は知っている。
しかし300キロを超えた途端、ココまで世界が変わって見えるのか……と。
両足に力が入る。
グリップを握る手がジットリと汗が滲む。
先頭を走る魔王Rが最初にコーナーへ飛び込み、次いで迅帝・戦艦が雪崩れ込んだ。
肢体を包むようなセミバケットシートもあって、身体は殆ど固定されている。
それでも強烈な横Gのせいか、はたまた現実味の無い景観のせいか、血の気が引いてクラクラしていた。
「やっぱり速いね」
この人はこんな状況でも涼しい顔を崩さない。
それどころか、うっすらと笑みを浮かべている。
経験の差……とはまた違う。
危機感と云うか、そういうものが欠落しているとしか思えない。
「GTOがですか?」
「それもあるけど、魔王もさ」
空港下トンネルに入る。
青いボディに反射する照明は、さながら空を巡る飛行機雲のように淡く線を描く。
二台の青いスカイラインGT−R……元を辿ればスカイラインもゼロ戦と同じ血筋。
連なり合って駆け抜ける様は、地上の戦闘機そのものだと思えた。
しかし馴れ合いはない。
前を行く魔王に対して迅帝Rは車体を半分ほどずらして走行する。
モータースポーツにおいて、この行為は一見無意味に見えるだろう。
長い直線では前車の真後ろに着き、スリップストリームと呼ばれる空間に入ることが定石だからだ。
それにより本来自身が受けるべき空気抵抗を低減し、最高速を伸ばすという効果をもたらす。
国内最長のストレートを持つ富士スピードウェイでは、この効果を駆使して第一コーナーで勝負を仕掛けるという光景が何度も見られる。
超高速のドッグファイト、そしてフルブレーキングからのコーナーでの応酬。
見ていて胸が熱くなる。
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