過去ログ - CoP「羅生門」
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10:名無しNIPPER
2015/05/16(土) 22:18:35.91 ID:9uVkpaBD0
「何をしていた。云え。云わぬと、これだぞよ。」

 CoPは、CuPをつき放すと、いきなり、剣の鞘を払って、蒼い鋼の色をその眼の前へつきつけた。けれども、CuPは黙っている。両手をわなわなふるわせて、肩で息を切りながら、眼を、眼球がまぶたの外へ出そうになるほど、見開いて、唖のように執拗ねく黙っている。これを見ると、CoPは始めて明白にこのCuPの生死が、全然、自分の意志に支配されていると云う事を意識した。そうしてこの意識は、今までけわしく燃えていた憎悪の心を、いつの間にか冷ましてしまった。後あとに残ったのは、ただ、ある仕事をして、それが円満に成就した時の、安らかな得意と満足とがあるばかりである。そこで、CoPは、CuPを見下しながら、少し声を柔らげてこう云った。

「己はアイマス検非違使の庁の役人などではない。今し方この門の下を通りかかった旅の者だ。だからお前に縄をかけて、どうしようと云うような事はない。ただ、今時分この門の上で、何をして居たのだか、それを己に話しさえすればいいのだ。」

 すると、CuPは、見開いていた眼を、一層大きくして、じっとその下人の顔を見守った。まぶたの赤くなった、肉食鳥のような、鋭い眼で見たのである。それから、皺で、ほとんど、鼻と一つになった唇を、何か物でも噛んでいるように動かした。細い喉で、尖った喉仏の動いているのが見える。その時、その喉から、鴉の啼くような声が、喘あえぎ喘ぎ、CoPの耳へ伝わって来た。

「この髪を抜いてな、この髪を抜いてな、鬘にしようと思うたのじゃ。」


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