7:名無しNIPPER
2015/05/16(土) 21:45:43.13 ID:9uVkpaBD0
CoPは、それらの死骸の腐爛した臭気に思わず、鼻を掩った。しかし、その手は、次の瞬間には、もう鼻を掩う事を忘れていた。ある強い感情が、ほとんどことごとくこの男の嗅覚を奪ってしまったからだ。
CoPの眼は、その時、はじめてその死骸の中に蹲っている人間を見た。紫の着物を着た、背の低い、痩やせた、白髪頭しらがあたまの、猿のようなCuPである。そのCuPは、右の手に火をともした松の木片を持って、その死骸の一つの顔を覗きこむように眺めていた。
CoPは、六分の恐怖と四分の好奇心とに動かされて、暫時は呼吸をするのさえ忘れていた。旧記の記者の語を借りれば、「頭身の毛も太る」ように感じたのである。するとCuPは、松の木片を、床板の間に挿して、それから、今まで眺めていた死骸の首に両手をかけると、丁度、猿の親が猿の子の虱しらみをとるように、その乏しい髪の毛を一本ずつ抜きはじめた。髪は手に従って抜けるらしい。
その髪の毛が、一本ずつ抜けるのに従って、CoPの心からは、恐怖が少しずつ消えて行った。そうして、それと同時に、このCuPに対するはげしい憎悪が、少しずつ動いて来た。――いや、このCuPに対すると云っては、語弊があるかも知れない。むしろ、あらゆる悪に対する反感が、一分毎に強さを増して来たのである。この時、誰かがこのCuPに、さっき門の下でこの男が考えていた、爆死をするか盗人になるかと云う問題を、改めて持出したら、恐らくCoPは、何の未練もなく、爆死を選んだ事であろう。それほど、この男の悪を憎む心は、CuPの床に挿した松の木片きぎれのように、勢いよく燃え上り出していたのである。
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