過去ログ - 大庭葉蔵「僕は、自演のないところに行くんだ」
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16:名無しNIPPER[saga]
2015/05/17(日) 21:56:16.82 ID:DEaQArjQO


ガチで勝ちに行く。


これほど、この自分に縁遠い話があるでしょうか。


恥の多い生涯を通じて、自分はただの一度たりとも、本気で勝ちに行ったことなどありません。

自分を取り巻いている世界は、人々が面白おかしく自作自演しながら作り上げた、いわば見世物小屋でなければなりませんでした。

もしも生きるための本気の勝負がそこに紛れ込んだりしようものなら、自分はあっと叫んで一目散に逃げ出すしかないのです。


自演のないところへ行く。

いつもの調子でお道化を言ったつもりでした。

しかし世の中には聞き流してもらえない言葉があるらしいことを、さすがに学んだはずだったのに、どうやら長年の酒やらモルヒネやら、ヘノモチンやらで、そのへんの線引きも曖昧模糊としてしまったのでしょう。

自分は脳病院へ入れられたほどの、廃人です。

廃人ならば、何を騒いでも所詮はうわ言と放置されると思っていたのは、やはり自分が浅はかだったのです。


それにしても、何を考えて自分は雪の中を歩き出したのか。

肝心の自分が、自演なしには生きていけない人間だったはずなのに。

例の情死事件すら、きっと世間は、自演と見て疑いもしていないのです。

女が死に、恥ずる気色もなく生き延びたこの自分を、気の毒な阿呆だと許している。

そして自分は、漫画家として「上司幾太」というふざけた筆名を選びました。自分とはまさしく、そういう人間でした。

そんな恥知らずの甘えも、時には見逃してもらえないことがあったのでした。




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