過去ログ - 長門「ユッキー……私の事を呼ぶならそう呼んで」
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15:名無しNIPPER[saga]
2015/05/17(日) 23:53:25.87 ID:Flc7T4o40


返事が5字にも満たないのは相変わらずだが、俺の思い上がりでなければ、俺たちふたりの距離はナメクジの匍匐前進と同じくらいのペースで、しかし着実に縮まりつつあった。
この会話をした翌日、貸すから、と分厚い本を渡されたときは感動さえ覚えたものである。
長門有希は俺が思っていたよりもたくさんの表情を持っていたらしい。
顔に出にくい性質なのか、環境がそうさせたのか、何にせよ難儀なことだ。
せめてあの本への情熱のひとかけらでもコミュニケーション不全の改善にぶつければ健全な学校生活を送れるような気がしないでもないのだが、
まあ俺が進言してやることじゃあない。少なくとも、今は、まだ。


「にしてもキョンよお、お前一体どんな魔法を使ったんだ?」



読者諸賢、ご紹介しよう。
いつもの通り昼休み開始の鐘と同時消えた長門有希の席を陣取り飯をかっくらっているこいつが、天下の阿呆と名高い谷口だ。



「長門有希があんなに長く喋ってるのなんて、初めて見たぜ。今まで誰とも接点を作りたがらなかったのによぉ」



驚天動地だと首を振る。
その隣で中学の同期だった国木田が、ちまちま白米を摘みつつ、


「キョンは昔っから変な女が好きだからねえ」

「誤解を招くようなことを言うな」

「あはは」

「変な女ねえ……」



谷口はなぜだかレモンを丸々一個食いしたような顔をした。



「思い出すぜ。俺の中学にも奇天烈な女がいてさあ。アレに比べりゃ、長門有希が可愛く思えてくる」

「へえ、随分だね」

「中学からの腐れ縁でよ、本当、わけのわかんねえことをしでかしてやがったもんだ」



有名なのは、と谷口が箸を振る。



「校庭落書き事件。理由は教師総出で問い詰められても言わなかったんだけどよ、出来損ないの何とかの地上絵みたいなのをグラウンドにでかでかと描いたわけだ」

「何を?」

「だから!出来損ないの何とかの地上絵みたいな奴をだよ!」

「ああ、そういえば地元の新聞で見たことあるなあ。あれでしょう? なんか……」



この会話だけでもふたりの知能指数は推して測れるだろう。
一生に照らせば出会って瞬きするくらいの時間しか経っていないというのに、こうも息ぴったりなのはなぜなのか。波長が合ったのだろうか。
その調子で融和し混じり合い、合体してお笑いコンビでも作ってしまえ。谷口に国木田、言いにくいな、谷木田、もしくは国口か。どちらにせよしっくりこん。
ぼんやりと話を右から左に受け流す俺の態度をいいように取ったようで、谷口は嬉々としてその女の伝説を語り始めた。
落書き事件から始まり、屋上にペンキで魔法陣らしきものを描いたり、教室中に怪しげなお札を貼りまくったり、奇妙奇天烈摩訶不思議なおさがわせはとどまるところを知らない。
数々の奇想天外な行動は、谷口曰く、


「意味わかんねーよ」


の一言に四捨五入されるらしい。
ただ見てくれはものすごくいいので、それ目当てで言い寄ってくる男が多かったそうな。
そして何を思ったのか、その女はそいつら全員と付き合ったのだそうな。一時期はとっかえひっかえとも言っていいくらいだったそうな。
そして、その全員が全員とも『普通の人間』だからというこれまたピントのずれた理由で一月と経たずにフられていったのだそうな。
長門もそうだが、そいつは健全な学校生活というものを知らんのかね。




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